研究課題/領域番号 |
18K01434
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
大木 直子 お茶の水女子大学, グローバルリーダーシップ研究所, 特任講師 (80612572)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リクルートメント / ジェンダー / 政治塾 / 女性の政治参加 / 選挙 |
研究実績の概要 |
本研究は、1990年以降に相次いで開講された政治塾や政治スクールが、女性の政治参加にどのような影響を及ぼすか、について政治的リクルートメント理論を用いて明らかにするため、女性が直面する候補者リクルートメント過程における障害に着目し、申請者がこれまで行ってきた事例研究と事例比較の手法を用いて考察するものである。 2年目の2019年度は、政治分野における男女共同参画の推進に関する法律が施行されてから初めての全国規模の選挙である統一地方選挙が行われたこともあり、以下のように調査の実施および研究成果の発信を積極的に行った。 第一に、統一地方選挙に関する候補者情報や選挙結果を収集し、男女別、自治体議会別、党派別などに整理した上で、女性の地方議会への進出がどこまで進んだかを、分析・考察した。これらの成果の一部は、学会誌の特集論文(日本選挙学会『選挙研究』)、学会発表(日本女性学会、日本政治学会など)、寄稿論考(女性団体機関紙や議員向け研修誌)、統一地方選挙に関する新聞社からの取材などで発表することができた。第二に、女性政治リーダーの育成の事例として、女性候補者育成の研修やプログラムを実施している団体に対して聞き取り調査や参与観察を実施し、分析結果の一部を国際学会(欧州ジェンダーと政治学会、アジア女性学会)や国際ワークショップ(コンラッド・アデナウアー財団、お茶の水女子大学IGL、同IGS)で発表することができた。第三に、女性の政治参画に関する国際比較データの分析や、海外での女性政治家養成のためのプログラムについて文献調査を実施し、日本の選挙制度や候補者リクルートメント過程などを再分析した。これらの成果の一部は、自治体主催の男女共同参画講座や、国内外の研究交流などに活用することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年4月実施の統一地方選挙の候補者・当選者については予定通りデータを収集し、自治体別、政党別、男女別にデータを整理・分析し、学会発表や選挙後の解説等にて考察する準備をすることができた。また、政治塾に関する文献収集を行い、それらの分析結果の一部を学会報告、寄稿論文、新聞社からの取材対応等に活用することができた。 政治塾関係者や受講者への聞き取り調査については、新型コロナウィルスの影響により日程調整が難航したが、女性団体による女性向けの政治塾3箇所の計4名に対して、具体的な女性候補者育成のプログラムや「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」の選挙活動への影響などを詳細に聞き取ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2018年に成立・施行された「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」では、政党その他の政治団体は、所属する男女のそれぞれの候補者数について目標を設定するなど自主的に取り組む「努力」を求められている(第4条)。同法の効果について、2019年の統一地方選挙や参議院議員選挙の結果を見る限り、数量的な意味で女性議員の増加は限定的だったとの分析も散見される。しかし、本研究での文献調査や聞き取り調査では、特に道府県議選での女性新人候補数や、実際の選挙期間中の有権者の反応などにおいて変化が見られたことを明らかにしている。 そこで、2020年度、本研究を以下のように進めていく。 第一に、2018年度以降実施してきた新聞の地方版や雑誌記事等の分析を継続するとともに、2015年以前の統一地方選挙のデータとも比較・分析することで、女性候補者・当選者のキャリアなどの属性の変化を見ることで、「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」の効果の質的な側面を考察する。第二に、政党主催の政治塾や実業家等が主催の政治塾を対象に、プログラムの実態や女性候補者擁立に向けた具体的な取組、実際の選挙活動における有権者や支援者の変化などを明らかにするため、聞き取り調査を行う。ただし、新型コロナウィルスの影響による移動制限や接触制限が継続され、対面での聞き取り調査を実施することが困難となる可能性がある。このような状況を踏まえて、質問紙を用いた調査や、過去に聞き取り調査を実施した政党や政党関係者への電話や書面での補足調査を視野に入れ、準備を進める。第三に、政治分野のリーダーシップ論やリーダーシップ養成に関する国内外の文献を収集し、政治的リクルートメントの理論の精緻化を目指す。
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