研究期間は大きく二つに分けることができる。ポスト55年体制期の連立政権として、その代表的な存在である自公政権を分析した時期、それに対抗して野党共闘を推し進めた日本共産党を研究した時期の二つである。 前者の最大の研究成果は、2019年に刊行した『自公政権とは何か』である。この本は、連立政権論という政治学の分析視角に基づいて自公政権を分析したものであり、ヨーロッパ大陸諸国の比例代表制の下での連立政権とは異なり、衆議院の小選挙区比例代表並立制の下での日本の連立政権では、選挙協力が鍵を握り、二ブロック型の多党制になることを理論的に示した。その上で、選挙協力と政策調整システムの二つに着目して分析を行った。理論的な分析に加えて、数量的なデータとインタビューを交えて分析した点に特徴があり、多くの書評で好意的に取り上げられるとともに、当事者たる各党でも言及されることが少なくないなど、現実政治にも一定のインパクトを持った。 後者の最大の成果は、最終年度である2022年に刊行された『日本共産党』である。この本は、国際比較、歴史、現状分析の三つの部分から構成される。とりわけ現状分析のパートでは、自公政権に対抗して始められた野党共闘、その延長線上に共産党が構想した野党連合政権の限界について、自公政権と比較しつつ明らかにし、最終的には共産党の路線転換が不可欠という結論を得た。この結論は、本書刊行直後の参院選で野党共闘の行き詰まりが明確化したことで裏付けられたといえるが、その後の共産党の党改革をめぐる議論にも一石を投じることになったという点で、特筆に値する。 以上のように、この研究期間を通じて二冊の本を刊行することができた。また、いずれの書物も、研究をベースとしながら、現実の政治を深く理解することに資する内容になったといえる。
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