研究課題/領域番号 |
18K01437
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
米沢 竜也 神戸大学, 国際協力研究科, 部局研究員 (80804997)
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研究分担者 |
見市 建 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 教授 (10457749)
MASLOW SEBASTIAN 仙台白百合女子大学, 人間学部, 講師 (10754658)
舟木 律子 中央大学, 商学部, 准教授 (20580054)
木場 紗綾 公立小松大学, 国際文化交流学部, 准教授 (20599344)
木村 幹 神戸大学, 国際協力研究科, 教授 (50253290)
杉村 豪一 常葉大学, 法学部, 講師 (80739516)
秋田 真吾 神戸大学, 国際文化学研究科, 協力研究員 (90774604) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 大統領弾劾 / 民主化 / ポピュリズム / 市民社会 / 政治的信頼 |
研究実績の概要 |
本研究は、「新しい民主主義国」において、大衆の政治的不満が議会や政党といった既存の民主主義的制度に回収されず、大規模な抗議活動、さらには大統領弾劾へと展開しているという仮説の下、現代民主主義の不確実性を各国の事例から分析する先駆的な試みである。 2021年度は、各研究者が担当する地域における大統領を中心とした政治とそれに対する市民・社会組織の相互作用について調査を継続した一方、「新しい民主主義国」と「先行する民主主義国」における政党制の制度化と市民の政治的信頼の程度を世界価値観調査のデータを利用して比較・分析した。分析の結果、「新しい民主主義国」における政治的信頼の水準と政党制の制度化の度合は総じて「先行する民主主義国」よりも低い点を明らかにした。このことは、「新しい民主主義国」では市民社会と政治を媒介する政党の役割が弱く、民主化後の政治に対する期待と実際の政治に対する評価の間にはギャップが存在していることを裏打ちするものである。 この政治的不信の中で市民は、選挙を介さない直接的な参加を通じた意思表示を模索することになるが、その形態については「新しい民主主義国」においても多様性があるとともに、時代を経るにつれて変化してきていることを改めて確認した。例えば、民主化後のフィリピンで社会諸勢力の利益調整を担ってきたNGOに対する市民の信頼が近年低下する一方、ドゥテルテ政権はこれらNGOを介さずに社会の広範な支持を獲得してきている。インドネシアにおいては、政治におけるイスラームの主流化が起きながらも、政権とフェミニスト運動間のネットワーク形成によってリベラルなイスラームのアジェンダ(ジェンダー問題)が政策に反映される様相がみられる。これら研究結果を学会・論文等で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、政党制の制度化や政治的信頼のデータ比較や、各研究分担者が担当する地域の研究を進め、国内外の学会等での発表することを確認しつつ、本研究の補助期間が終了するまでに研究成果を何らかの形で取りまとめることを確認した。その結果、従来の各地域の政治参加の変化というミクロ的分析だけでなく、新旧民主主義国間の比較といったマクロ的分析の結果を学会で報告、もしくは、論文として公表するという成果があった。ただ、コロナウイルス感染症の拡大により、各国における現地調査が制限されたため、予定していた研究が滞った部分もあった。2022年度はコロナウイルス感染症の状況も踏まえながら、実現可能な範囲で研究を進め、成果をまとめる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、これまでの研究で明らかになった「新しい民主主義国」の特徴を鑑み、大統領弾劾に結び付く大規模な大衆行動だけでなく、民主化後の政治参加の変化(社会の分極化やメディアコミュニケーション、政治マーケティング、市民社会の役割)などにも注目し、各地域の分析を進めていく。同時に、これまでに蓄積してきた「新しい民主主義国」の分析内容を、近年世界的趨勢として指摘される「民主主義の後退」や「ポピュリズム」の議論に結び付け、民主主義の安定・不確実性に関する知見に新たな貢献をすることを念頭に研究を進め、論文として成果をまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた現地調査や文献の購入を実施しなかったため、次年度に繰り越しが生じた。昨年度使用分も合わせて、今年度はすべて使用する。
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