研究課題/領域番号 |
18K01442
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
藤田 由紀子 学習院大学, 法学部, 教授 (00338584)
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研究分担者 |
内山 融 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00242066)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | EBPM / エビデンス / 政策形成 |
研究実績の概要 |
本研究の初年度にあたる平成30年度の研究実績の概要は、以下の通りである。 第一に、EBPM(エビデンスに基づく政策形成)について、その意義、代表的な手法、今後の課題などを明らかにした。まず、EBPMの意義については、昨今の統計不正問題などに鑑みるとEBPMの重要性があらためて強調されるべきことが確認された。また、EBPMの手法としては、既に、RDD(回帰分断デザイン)やDID(差の差分析)などの多様な手法が開発されている。しかしながら、政策分析を担う人材が少なく、その養成が大きな課題であることなどが確認された。 第二に、EBPMの普及が進展している英国を中心に、EBPMを実効的たらしめている条件について調査を行った。具体的には、英国の財務省、内閣府、教育省などにおけるインタビュー調査が主体となった。その結果、以下のような点を明らかになった。1.英国政府では各省におけるエコノミスト職、社会調査職、オペレーショナルリサーチ職、統計職といった分析専門職が政策分析と政策形成に大きな役割を担っている。2.省庁の枠を超えた専門職ネットワークの存在がEBPMについての全政府的な共通理解を形成し、分析スキルの質を担保している。3.財務省がEBPMを各省に浸透させる上で決定的な役割を担っている。4.EBPMに実効性を持たせるためには、行政内部の努力のみならず、議会や会計検査院などの外部機関の役割も重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はEBPMの意義、手法、課題などについて明らかにした上で、英国を中心としてEBPMを実効的なものにしている条件について一定の調査を行った。全体の研究計画に照らして、準備段階として十分な成果を生んだと考えられるため、研究計画第1年目としておおむね順調に進展しているものと自己評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、まず英国の事例について引き続き調査を進める。英国財務省が果たしている役割に関する調査をさらに進めるとともに、分析専門職の役割についてもより詳細な調査を行っていく。また、米国の事例についても調査を開始する予定であるが、米国ではトランプ政権になってEBPMの推進力が減退したようにみえる。この点を考慮した上で米国のEBPMの実態について調査を進める。その上で、日本との比較を通じ、日本においてEBPMを実効的なものにするための条件について明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
書籍の購入や通信費等が想定していたよりも少なく済んだため、残額が生じたが、それらは、次年度の現地調査のための旅費に充当する予定である。
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