研究課題/領域番号 |
18K01445
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
坂部 真理 大東文化大学, 法学部, 教授 (30513668)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アメリカ教育改革 / 資本主義の多様性論 / 新自由主義/新保守主義 |
研究実績の概要 |
2019年度は、主に二つの研究を実施した。第一に、三回連載の第三回(最終回)として、NCLB法の制定過程のうち、下院本会議での審議から同法成立までの過程を分析した。この中では同法の「中心」的要素(法案をめぐる党派的対立・交渉の中で妥協しえない要素)は何か、という問題をめぐり、大統領、共和党の議会指導部・議員、その支持基盤である多様な保守系団体の間で見解の対立が存在し、特に同法に含まれる諸要素のうち、教育の「標準化」と「市場化」のいずれを優先すべきか、という点についての分裂が顕在化していた事を明らかにした。当時の議会では、政党間の対立に加えて、この保守勢力内の対立が、同法が目標に掲げていた教育の「標準化」「市場化」の貫徹をそれぞれ不徹底なものに終わらせ、いわゆる「カリキュラムの狭隘化」など多様な意図せざる結果をもたらす原因になったことも指摘した。 第二に、資本主義の多様性論で指摘される、普通教育(一般的技能)中心というアメリカの教育制度-労働市場の特徴の歴史的起源を解明する目的で、同国で全国規模の経営者団体が誕生した19世紀末以降の資料を分析し、教育制度に関する主要経営者団体の選好の変化とその背景を検討した。今年度は、Hagley Museum/Library、New York Public Libraryにおいて資料収集を行った。この分析の結果、全米商工会議所や全米製造業者協会などの団体が、①20世紀半ばまで、普通教育への連邦関与に対して原理的な反対姿勢を貫いていた事、②技能労働者の供給が逼迫した「緊急時」のみ、「例外」的に職業教育プログラムへの国庫補助を支持してきた事、③転機は80年代半ばから90年代初頭の時期であり、脱工業化段階における労働力需要・供給両面での変化への認知から、両団体が普通教育への連邦関与・財政支出を積極的に支持する方針に転換した事、を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は3月末にアメリカ(議会図書館・ワシントンDC)で資料収集を行う予定であったが、コロナによる渡航自粛要請の影響で中止した。同様に3月以降予定していた国内の諸団体への訪問・資料収集も中止せざるを得なかった。後者の調査は、日米間の比較分析を行う上で不可欠であったため、この部分の研究に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
外出自粛の解除後、資料収集を再開する。しかし2020年3‐6月期の資料収集が遅れ、かつ今後、夏季休暇の短縮も予定されていることから、新たな資料収集よりもすでに2019年中に収集した資料の分析(アメリカの教育改革の歴史的展開の分析)に重点をおいて研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月末に予定していたアメリカでの資料収集がコロナウイルスによる渡航自粛要請のため中止になり、旅費が使用できなかったため。
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