研究課題/領域番号 |
18K01445
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
坂部 真理 大東文化大学, 法学部, 教授 (30513668)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 新自由主義/新保守主義 / レーガン政権 / サプライサイド戦略 / 教育改革 / 人的資本投資 |
研究実績の概要 |
2020年度はコロナ禍の影響により、予定していた国内外での資料収集が困難であった。そのためオンライン等で入手可能な範囲の資料のみで研究せざるを得ず、論文執筆に支障が生じた。したがって、今年度の研究は、当初の計画を大幅に変更し、連邦議会・公聴会議事録等をもとに、レーガン政権初期の経済政策に対する経営者団体の選好の分布状況を分析した。レーガン政権発足初年の予算案・経済政策は大統領のサプライサイド経済戦略と「小さな政府」のアイディアが鮮明に反映されたものであった。従来、アメリカの経営者団体は、新自由主義(新保守主義)連合の主軸として「小さな政府」戦略の主要な推進主体と見なされ、特に経済政策に関してはレーガン政権との選好の同質性が強調されてきた。しかし議会公聴会における多様な経営者団体の証言を詳細に検討すると、推進すべき「サプライサイド」戦略の内容について、政権と一部の経営者団体間、および諸経営者団体間に乖離が生じていたことが分かる。すなわち多様な業界の企業を包摂する全米商工会議所(USCC)等はレーガンの「小さな政府」戦略への全面支持を表明していたのに対し、特に当時、国際競争の激化に直面していた製造業者・業界団体は、むしろ「小さな政府」がもたらす教育予算の削減に対して強く反発し、減税・歳出削減よりも「教育投資の拡充」こそが国際競争戦略上、有効であると主張していたのである。 このような分裂の基底には、「サプライサイド」経済戦略として、①減税・歳出削減による民間設備投資の促進を重視するレーガン政権等と、②公的教育支出の拡充による人的資本投資(労働者のスキル向上)を重視する製造業者等の間のアイディアの差異が存在していた。この経済戦略をめぐる対立は、80年代を通じて拡大するレーガン政権ー経営者団体間の教育改革をめぐる対立に繋がるものとして重要である。以上の内容を論文一本にまとめ、刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍による国外渡航制限・各種団体への対面調査等の制限により、研究に必要な資料が十分入手できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
国外への渡航制限が今年度も持続する可能性を考慮し、国内研究機関・図書館およびオンライン上で資料が入手可能な時期(主に1980年度以降)の分析に重点を置く。また国内でも各種団体への訪問・対面調査は依然として困難であることから、まず文献・資料の分析を先行して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により海外渡航が事実上禁止され、予定していたアメリカ(ワシントンD.C・議会図書館)での資料収集を実施できなかったため。
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