研究課題/領域番号 |
18K01449
|
研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
浪岡 新太郎 明治学院大学, 国際学部, 教授 (40398912)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | フランス / イスラーム / 市民社会 |
研究実績の概要 |
本年度は、欧州とフランスとの法解釈をめぐる論争が、どのように市民社会、政界の議論と交錯しているのかを論じた。その際には「トランスナショナル・ガバナンス」の理論的枠組みに依拠した。 その結果、フランスにおける公的空間におけるイスラームのスカーフの着用の可否をめぐる議論が、市民社会、政界、司法界の三つのレベルで異なって論じられていること、また、異なった論じられ方が市民社会、政界、司法界のそれぞれのレベルにおける主導権争いによっていることを明らかにした。その際に、それぞれのレベルにおける主導権争いが、異なったレベルの主導権争いと関連していることを指摘した。たとえば、市民社会でスカーフ禁止法成立の要求が高まっている際には、司法界におけるマイノリティの法学者が、市民社会の要求に応えた法解釈を提示することで、市民社会の要求に沿った法解釈の担い手として自分を定義し、司法界での自分の位置を強化しようとする事例である。同じような各レベルでの主導権争いが、異なったレベルでの主導権争いと関連することで、結果的に実現が不可能と考えられていたスカーフ禁止法案が成立していく。 本年度は、他に、日本における多文化状況の扱いとフランスの事例を比較することで、フランスにおける事例研究の日本における含意を明らかにすることを試みた。特に、日本における在日外国人問題や先住民族問題についての研究者との会合を行うことで、比較の可能性について検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍のためにフランスでの現地調査を行うことができなかった。そのために、これまでの研究調査の補足や、不足する一次資料の収集が困難であった。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度は、現地調査が不可能な場合には、オンラインでのインタビューなどによって可能な限り不足分を補い、その時点での研究の取りまとめを行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のために、当初予定していた現地調査が不可能になったために、旅費として予定していた予算が余ることになった。その分、準備している単著のための資料収集や校正校閲に予算を使用した。本年度は、渡航を考えている。
|