本研究は、自治体の①州及び連邦政府に対する出訴権、②自治体裁判所による条例の実現、③法への違反者に対する自治体裁判所を通じた代替的課題解決プログラムの実施について研究を行うものである。本研究の期間中、新型コロナウィルス蔓延の影響でアメリカ等の自治体の現地調査が困難であったため、本年度は最終年度ではあるが、研究計画の①、②、③のそれぞれについて現地調査を中心とした研究を行った。 まず、①に関する現地調査については、研究分担者に代わって、アメリカ地方自治を専門とする研究者(小川有希子先生(帝京大学法学部助教))に現地調査を依頼した。同州の地方自治制度、自治体と州政府との関係及びそれらの最近の状況については、テキサス州南メソジスト大学の教授にヒアリングを行い、自治体の訴訟実務等についてはダラス市の元顧問弁護士にヒアリングを行った。 次に行政学・地方自治の専門家に「アメリカにおける市町村(コミューン)の州(や合衆国)に対する出訴の制度及び仕組み」についての調査を依頼し、「自治体の出訴権(アメリカの事例)」というタイトルで報告を受けた。 ②③に関しては、研究代表者がホノルル市に施設をおくThe Mediation Center of the Pacificを訪問し、ヒアリングを行った。この団体は、1970年代に連邦、州や自治体、地域コミュニティの支援を得て、コミュニティの問題解決(相隣関係など)を裁判外で行う目的で設置され、それ以降、地域に根付いている。現在は、州の地区裁判所と連携して、近隣問題に限らず、地域の多様な民事の紛争についてメディエーションを行っているが、本調査では、州法や条例の下で、相隣関係など地域的な問題が生じる場合に、地域ごとに設置されるメディエーションセンターが果たす役割及び同センターによるメディエーターの育成とそれが地域に与える影響などについて話を聞いた。
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