研究課題/領域番号 |
18K01453
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
文 京洙 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (70230026)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 社会的経済 / 韓国 / ガバナンス / 地域社会 / 社会的企業 / 協同組合 / まちづくり / べーシック・インカム |
研究実績の概要 |
本研究は、韓国の社会的経済の取り組みが個々の事業体の育成・支援を中心とした“点“としての取り組みから、地域社会の再生・創造をめぐる“面”としての取り組みへの転換点にあるとの認識にたって、この新しい局面での地域社会の多様なステークホルダー間の重層的かつ協力的なガバナンスのあり方を、日本との比較を踏まえて、実証的かつ理論的に究明することを目的としている。2019年度に調査に入った各地(忠清北道清州市、忠清南道洪城郡、大田広域市など)では、こうした“面”への転換が確認できた。例えば大田市では社会的経済の体系的な展開を通じた地域共同体レベルの住民力量強化を目指して「社会的経済課」が設置され、これを軸に市内の多様な社会的経済の支援と連携を強化する取り組みが観察できた。 一方でこうした傾向は、NPO法人という形で展開し設置認可そのものは容易であるが、行政による直接的な支援策に乏しい、日本の社会的経済との違いを一層際立たせることになった。韓国では「社会的企業育成法」の認証制度によって人件費、事業開発費、社会保険料など手厚い財政支援を受けるが、調査地では、一定の期間を経てそうした財政支援が中断するとたちまち経営困難となり、廃業や認証取り消しに追い込まれる社会的企業が少なくないことも明らかになった。上述の「社会的経済課」などを軸とする広域自治体の包括的な社会的経済政策がいかにこうした難題を克服しうるのか、この点を見極めることが本研究の最終段階の課題となった。 一方で2018年には京畿道において「ベーシックインカム運動の京畿道モデル」とされる「青年基本所得」政策が新たに導入され、社会政策の新たな展開として注目された。社会的企業や社会的経済との関連でもこうした韓国でのベーシックインカムの試みを調査することが重視されざるを得ず、これについて聞き取り調査を行うことも課題となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度では、完州郡(全羅北道),全州市(全羅北道)の2地域についても調査を実施するとともに各地での調査結果を踏まえ、日本など諸外国の事例とも対比しつつ、非営利・協同事業を中心とした包括的な地域づくりを検討し、大田の「社会的経済課」などに見られた行政改革など、新しいガバナンスの韓国的特徴や課題を明らかにすることを課題としていた。さらに、近年韓国でも注目され、一部地域ではすでに試験的に導入されている「ベーシック・インカム」の試みを京畿道のそれを中心に検証し、より包括的なローカルガバナンス像を確定する作業を試みようとした。 だが、新型コロナ感染拡大のため韓国での調査が困難となり、2020年度は、インターネットを通じた情報交換や資料収集や、これまでの調査実績を反映した論文・著作の執筆にとどめざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に予定していた完州郡(全羅北道),全州市(全羅北道)の2地域について調査を実施するとともに各地での調査結果を踏まえ、非営利・協同事業を中心とした包括的な地域づくりをめぐるガバナンスの韓国的特徴や課題を明らかにする。さらに、近年韓国でも注目され、一部地域ではすでに試験的に導入されている「ベーシック・インカム」の試みを京畿道のそれを中心に検証し、より包括的なローカルガバナンス像を確定する作業を試みる。 これらの調査結果を踏まえて、社会的経済をめぐる「水平的でネットワーク型のガバナンス」を到達すべき理念型として想定しつつ、韓国でのローカル・ガバナンスの内実が、行政主導からその理念型へと向かう、どのような段階にあるのかを検証し、ガバナンスをめぐる国際比較や類型論の構築をはかりたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に計画していた韓国での調査が新型コロナ感染拡大によって実施できなかったため次年度使用額が生じた。 当該年度に予定していた韓国の全羅北道および京畿道での調査に使用する予定である。
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