研究課題/領域番号 |
18K01453
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
文 京洙 立命館大学, 国際関係学部, 授業担当講師 (70230026)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 社会的経済 / 韓国 / ガバナンス / 地域社会 / 協同組合 / まちづくり |
研究実績の概要 |
本研究は、韓国の社会的経済の取り組みが個々の事業体の育成・支援を中心とする“点“としての取り組みから、地域社会の再生・創造をめぐる“面”としての取り組みへの転換点にあるとの認識にたって、この局面での地域社会の多様なステークホルダー間の重層的かつ協力的なガバナンスのあり方を、実証的かつ理論的に究明することを目的としている。2019年度までの調査(忠清北道清州市、忠清南道洪城郡、大田広域市など)では、こうした“面”への転換が確認できたが、2020年度以降に予定していた完州郡(全羅北道),全州市(全羅北道)、さらには済州島やソウルでの調査については新型コロナ感染拡大のため、実施できていない。2021年度についてもインターネットを通じた情報交換や資料収集に努めざるを得なかった。とりわけ、ソウルを中心に展開する社会的経済支援の国際的な連携の取り組みであるグローバル社会的経済フォーラム(GSEF Global Social Economy Forum)への取材や調査を実施した。 2013年にソウルで第1回が開催されたGSEFは、第2回(2016年)モントリオール、第3回(2018年)ビルバオ市(バスク地方)で開催され、2020年にはウイズ・コロナ時代の社会的経済をテーマとするオンライン開催となった。2021年度はメキシコでオン/オフライン・ミックス方式で10月4日~8日に開催された。 メキシコ大会は、本研究の主要な関心事でもある「地方政府と社会的経済」をテーマに、ポスト・コロナ時代の新しい方向を模索する地方政府と社会的経済の協力について集中的に議論されている。そこでは、総じて社会的経済がコロナ禍の危機を克服する力量と回復力を示し、地方政府も地域社会とともに危機に対応する新しい手段を構築し、親環境的でインクルーシブ、さらに持続可能な経済基盤・生態系づくりに貢献したことが論じられている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は、完州郡(全羅北道),全州市(全羅北道)、ソウル、済州道の4地域について調査(再調査)を実施するとともに各地での調査結果を踏まえ、日本など諸外国の事例とも対比しつつ、非営利・協同事業を中心とした包括的な地域づくりを検討し、大田の「社会的経済課」などに見られた行政改革など、新しいガバナンスの韓国的特徴や課題を明らかにすることを計画していた。 だが、2020年度に続いて新型コロナ感染拡大のため韓国での調査が困難となり、2021年度は、インターネットを通じた情報交換や資料収集、これまでの調査結果の整理・分析にとどめざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度には、2019年までに実施した調査結果を、2020年と2021年のGSEFの取材を踏まえて、ポスト・コロナ時代や国際的な文脈で位置づけるための分析に努める。とくに2021年度にメキシコで実施されたGSEFでは、社会的経済の推進における地方政府の役割や協力に焦点をあてた各地の報告があり、本研究に有意な素材となりうる。 以上に加えて2021年度に予定していた完州郡(全羅北道),全州市(全羅北道)の2地域について調査、および、ソウル・済州道での再調査を実施するとともに各地での調査結果を踏まえ、非営利・協同事業を中心とした包括的な地域づくりをめぐるガバナンスの韓国的特徴や課題を明らかにする。これらの調査結果を踏まえて、社会的経済をめぐる「水平的でネットワーク型のガバナンス」を到達すべき理念型として想定しつつ、韓国でのローカル・ガバナンスの内実が、行政主導からその理念型へと向かう、どのような段階にあるのかを検証し、ガバナンスをめぐる国際比較や類型論の構築をはかりたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は主として韓国の地域社会をフィールドとする研究であり、当該年度に計画していた韓国での調査が新型コロナ感染拡大によって実施できなかったため次年度使用額が生じた。 当該年度に予定していた韓国の全羅北道および京畿道での調査、およびソウルなどでの再調査に使用する予定である。
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