環境の政治史――政府間関係から見る廃棄物・リサイクル対策

2021 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 18K01454
• 研究機関: 立命館大学
• 研究代表者: 森 道哉 立命館大学, 政策科学部, 教授 (40380141)
• 研究期間 (年度): 2018-04-01 – 2023-03-31
• キーワード: 環境政治 / 事例研究 / 政府間関係 / 廃棄物 / リサイクル / 資源循環

研究実績の概要

本研究の目的は、政府間関係論の観点からの廃棄物・リサイクル対策の検討を通じて、環境政治の内包と外延を把握し、併せて戦後日本の政治過程を捉え直すことである。そのために年度により重点の置き方をずらしながら、三つの課題に取り組むこととしている。研究代表者の従前の研究と連結させながら、第1は、災害廃棄物処理の政府間関係の検討を進めることである。第2は、「環境政治」に関する主要な先行研究やそれへの批評などを読み解き、それらの論理構成や主張を精査することである。そして第3は、環境政治の分析対象を広げた廃棄物・リサイクル行政の研究が、その研究の初期から注目されてきた公害のそれとの関係において、どのように理論的に位置づけられるのかを考察することである。
2021年度は、本研究の最終年度の研究活動として計画されていた。1点目に関しては、実地調査などに軸足を移していく予定であった。しかし、2020年度から続くコロナ禍での各種の制約の下、過年度までの遅れを取り戻すところまで進められなかった。一方で、理論面での研究は、学会活動と関連づけることにより、深める契機を得ることができた。2点目については、1点目の進捗状況を補うことを企図して、2020年度と同様に、従来の研究代表者の研究を俯瞰する観点からの検討、特に以下の2点に力点を置いた。著作としての公表に至っていないが、一つは、アメリカの地方政府の環境規制に関する研究を同国の政治過程論の系譜と交錯させて検討する試みであり、もう一つは、環境規制の動態を論じた研究に基づく日本の地方自治の考察である。3点目については、過年度までの1点目および2点目の研究内容も見直しながら、本研究の含意の引き出し方について検討した。

現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

本研究の具体的な研究課題および検討内容については、「研究実績の概要」で述べた。そこで記した三つの課題に共通するが、コロナ禍の下で作業を続けるなか、第1の課題については調査を予定する内容であることから大幅に遅れており、予算の執行においても大きな影響が出た。第2の課題は先行研究の検討をより精緻に行うことであり、2020年度の成果を踏まえて研究を進めるなかで、日米の環境規制と地方自治に関する議論を並行して検討できたことは、課題の趣旨に照らして有意義であった。第3の課題は、公害に関する議論ともかかわりをもち、過年度までに収集した文献の検討が主たる作業となったが、併せて三つの課題を総合的に考察する基盤の形成に努めた。
進捗状況は、2021年度全体としてみれば遅れていると評価しているが、その修正にあたって得られた知見は過年度と同様に、積極的に捉えている。

今後の研究の推進方策

次年度は、補助事業期間延長を経ての本研究課題の最終年度となる。まずは、遅れている第1の課題の実施に向けて注力する。第2の課題は、三つの課題のなかでは相対的に進められているが、過年度までに収集している資料を見直すと同時に、検討結果のまとめに取り組む。本欄の記入時点において、コロナ禍を受けてそれらに関する調査などを行う環境が整っているとは言い難いが、第3の課題への理解も深めつつ、これまでの検討内容を整理する。

次年度使用額が生じた理由

以下、2020年度提出分とほぼ同様の記述となることを断りつつ、次年度使用額が生じた主な理由を述べる。上欄でも記しているように、それは、実施を検討しえた出張を新型コロナウイルス感染症対策の観点から全く実施できなかったことによる。また、2019年度および2020年度もコロナ禍の影響を受けて相応の次年度使用額が生じていたことから、2021年度の執行額は極めて限定的なものとなった。コロナ禍がどのように推移するかについては不透明な部分があるが、可能であれば調査、出張を再開し、事情が許さなければ、過年度と同様に、文献研究などをより手厚く行った上で、本研究をまとめる。