研究課題/領域番号 |
18K01457
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
平野 淳一 甲南大学, 法学部, 准教授 (10550949)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 地方政治論 |
研究実績の概要 |
本年度は、首長の政治的基盤にかかわる先行研究の調査を行い、関連する諸研究について主に日本語で書かれたものについて収集を行うことができた。また、首長の政治的基盤の強弱について探るために、市長の任期途中の辞職に注目し、その実態について分析を行った。そのために、1975年4月から2017年3月にかけての市長選挙を調査し、任期途中によるものと思われる620件の選挙事由を明らかにした。その結果、市長の死亡・病気による辞職、逮捕・起訴による辞職が最も多くなっている一方で、議会での不信任の議決や住民からのリコール請求といった制度的に予定されている任期途中の辞職は少ないことが明らかになった。また、他の事由としては、衆参両院議員や知事といった国政・県政への転出、自身や市役所職員の不祥事等に伴う引責辞任、議会等との政策対立に起因する出直し選への出馬といった事例が一定数あることを明らかにした。その結果、上記の市長の任期途中の辞職の事由のうち、死亡・病気による辞職以外のものについての事例について、市長の政治的基盤の強弱と密接に関連していることが分かった。この他に、現職市長の当落に密接に関連すると思われる対立候補の出現について明らかにするために、衆議院の選挙制度改革が、地方議員をはじめとする諸アクターの市長選挙の出馬に与えた影響について分析を行った。分析の結果、選挙制度改革が主として市議会議員の市長選挙への参入を促していることが明らかになった。これらの他に、当初予定していた市長選挙の当選者以外の情報(氏名等)のデータ構築についても行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
関連する先行研究の収集・調査について、日本語文献に関してはほぼ終えることができた。また、市長の政治的基盤の強弱を調査する上で有益と思われる任期途中の辞職の事例について、その全容を明らかにすることができた。また、現職市長の対立候補の出現と衆議院の選挙制度改革の関係についても計量分析によって実証することができた。この他に、当初予定していた市長選挙の当選者以外の情報(氏名等)についてもデータの構築を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進に関しては、まず、先行研究の検討については英語文献についての収集・調査を行い、理論仮説の構築を行っていく予定である。また、市長選挙だけでなく、知事選挙についても事例やデータの収集を行う予定である。この他に、現職市長や議会多数派に押された対立候補を破って当選した市長の事例について検討し、首長の支持基盤形成の過程を明らかにすることを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、予定していたデータ入力のアルバイトの雇い入れができなかったため、次年度使用額が生じた。次年度にアルバイトの雇い入れを行うか、難しいようであれば、データ入力を効率的に行うために必要な機器を購入したい。
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