本年度は、初当選後1期4年を務めた現職市長を分析対象として、再選の規定要因について分析を行った。1期目を終えて再選を目指す市長は、一般的に再選しやすいとされているが、落選する者も一定数存在する。1期目を終えた市長は、自身の権力基盤を十分に固められていない者も含まれていると考えられ、その当落の要因を探ることには意義がある。また、これらの現職市長の中には、その前の現職から後継指名を受けた者と、前の現職を破って新たに市長となった者が混在しており、市長としての正統性や権力基盤に違いがみられることも重要である。以上の点を踏まえ、1996年から2022年の間に行われた1期目を終えた現職市長が再選を目指した市長選挙を分析対象とし、現職市長の当落を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った。その結果、初当選時である前回市長選挙で前の現職市長を破って当選した市長ほど、それ以外の市長と比べてより再選可能性が高くなることが明らかになった。この他に、前回選挙での得票率の多さ、政権与党による推薦・支持についても再選可能性を高めることが分かった。他方で、地方分権改革や人口一人当たり歳出といった財政要因が現職市長の再選に与える影響は確認できなかった。これまでの分析から、初当選時における現職市長のそれまでの市政に対する立ち位置(後継者または挑戦者)が1期目終了後の現職市長の再選可能性に影響を与えていることが分かった。
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