本研究では、対国際連盟外交を牽引した石井菊次郎の外交思想と行動を、日仏関係にも目配りしながら検討した。石井は、上部シレジア国境問題やコルフ島事件のように1920年代の国際連盟が直面した様々な紛争の解決に貢献したけれども、そこでは日仏協調による対独抑止や、日中紛争が起こった場合の連盟における対応の問題も考慮されていた。石井の外交における国家主義的バイアスは、満州事変期に日本陸軍を批判しながらも、満州国を承認し日本政府の代弁者といわれる行動をとったことに見られる。なお本研究では、日本の連盟脱退やその後の日独接近のように、事変を契機に日仏関係が脆弱化したことがもたらした帰結についても検討した。
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