研究課題/領域番号 |
18K01461
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
後藤 春美 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00282492)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 国際連盟 / 国際主義 / 社会人道面での活動 / アヘンの規制 / 帝国主義 / 帝国 / 保健 |
研究実績の概要 |
今年度は、これまでの研究に関する講演、報告を行う機会を得、それらに関連して研究を広い視点から深めることができた。 講演としては、第71回日本西洋史学会大会において記念講演「国際連盟の第三の機能ーー保健機関とアヘンの規制を中心に」を行う機会を与えていただいた(2021年5月15日、主催校は武蔵大学、オンライン)。企画に当たられた皆様に感謝申し上げたい。 「国際連盟の第三の機能」とは、まさに本研究の取り組む「社会人道面での活動」である。この講演では、19世紀に遡って保健、アヘンの規制という二つの活動が芽生えた点を探り、それがどのようにして連盟の活動に取り込まれたか、連盟期にはどのような具体的活動が行われたかを詳述した。その上で、1930年代に活動を発展的に見直す機運が生まれていたことを指摘し、それが国際連合経済社会理事会につながったことを展望した。 また、第119回史学会大会シンポジウム「世界主義の諸様相ーーコスモポリタニズム・アジア主義・国際主義」において「多分野における国際主義を取り込んだ国際連盟ーーその活動と問題点」という報告を行う機会も与えていただいた(2021年11月13日、オンライン)。こちらも企画に当たられた皆様に感謝申し上げたい。 報告では、18世紀末の international という言葉の誕生に遡り、19世紀における internationalism を概観し、その imperialism との関連にもふれた。これまでの後藤の研究は国際連盟の具体的事象に即して行ってきたのだが、このシンポジウムおよびその準備の過程で、18世紀のコスモポリタニズム、あるいは国際主義と同時代のほかの世界主義の研究との関連、比較という点で考察する機会を得た。本年度もコロナ禍により資料収集はできなかったのだが、国際主義の思想史的側面に関しては理解を大いに深められたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍が続き、海外に資料収集に行くことはできなかった。そのため、この研究課題を当初構想したときに考えていた「国際連合経済社会理事会への連続と断絶」という側面に関しては、ほとんど進めることができていない。 一方で、「国際連盟の社会人道面での活動」やその背景にあった国際主義に関しては、大量の一次資料を集めるというのとは別の研究方法によって深めることができたと考えている。すなわち、関連する二次文献の渉猟や関連分野研究者の方々との交流である。 当初の計画という点では「遅れている」のであるが、研究を深めるという点では、それなりの成果を上げることができていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍による移動制限は徐々に解除されていくとは思うが、ウクライナ情勢を含め世界情勢が、本研究の計画を立てた2017年とは大きく変化してしまったことは考えざるを得ない。海外の史料館を何度も訪問して大量の一次資料を集めるという研究手法を再び採る日も来るかもしれないが、本研究に関しては残された期間も少ない。 むしろ、2020~2021年度に進めたような方向で、「国際連盟の社会人道分野での活動」に関し、時期を19世紀まで広げ、あるいは、国際主義の発展やその帝国主義との近接性という思想的側面にまで視野を広げて研究を深めていくことの方が有効であり、実り多いように考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、毎年複数回海外に資料収集に赴くことを想定していた。残念ながら過去2年間多くの研究者にとって海外渡航は困難となり、後藤個人に関しては、最後に資料収集に赴くことができたのは2019年9月である。そのため次年度使用額が生じている。 幸いにコロナ禍に関する移動制限は緩和される方向にあるので、後藤も2022年夏あるいは2023年3月には海外に赴き、資料収集をしたいと考えている。この渡航費用、滞在費として次年度使用額を使用することを考えている。
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