研究課題/領域番号 |
18K01469
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
八丁 由比 九州工業大学, 教養教育院, 准教授 (90404095)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 国際連合憲章 / 人種平等 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、国務省内で検討された戦後構想にみる人種平等への配慮について調査を行った。特に既出版では得られない資料を得るために、夏休みを利用して米国メリーランド州にある公文書館アーカイブIIへ行き、4日ほどの資料収集を行った。戦後構想に携わった国務省のハーレイ・ノッターの文書ファイルの中に、今回のテーマに関する文書が多く含まれていることがわかり、これを中心に調査を行った。関係があると思われる文書を700枚近く入手し、現在その分析を進めている。 現在までに進んでいる分析の中で最も興味深い発見は、ダンバートン・オークス会議のために国務省スタッフが作成した内部文書である。この会議では、参加国が戦後秩序の青写真を文書にまとめ、会議開催前に互いと交換することになっており、その関連文書と思われるファイルを発見することができた。またその中に、人権について詳しく検討されたものをみつけることができた。 Human Rightsと題されたこの文書は、その示すところが具体的かつ詳しく書かれており、国務省レベルで人権や人種への言及の必要性について検討を行ったことをうかがい知ることができる。しかし、ダンバートン・オークス会議後に出された米、英、ソ、中、4か国による提案文書は、人権を含め、人道や道義など国際社会の理想像的な側面はほとんど含まれておらず、4か国以外の国々や民間団体から、強い反発を受けることになる。今回の調査では、ノッターが米、英、ソ、3か国の事前案を項目ごとに比較検討した文書も入手しており、今後分析を進め、ダンバートン・オークス会議からサンフランシスコ会議の期間の国務省の動きに注目する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の予定は国務省内部での検討状況を分析することであり、他では入手不可能である国務省内の文書をアメリカ公文書館で入手することができた。特に関連が深いと思われる文書を探し当て、分析を始めている。文書の量が多いので、全てに目を通すことができていないが、31年度も継続して検討を続ける。
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今後の研究の推進方策 |
・引き続き国務省内で検討された戦後構想に見られる人種平等への配慮を特定し、それにかかわった主要人物であるハルおよびステティニアス国務長官に注目しながら分析を進める。 ・上記に加え、30年度に入手した文書の多くを作成していたハーレイー・ノッターの考えについても調査をする。 ・国務省の検討と並行して、国務省と良好な関係を維持していた民間団体の一つであるCSOPの戦後構想について調査を行う。特に、ジェームズ・ショットウェルの他、クインシー・ライト、国務省の内部委員会に参加していたイザイア・ボウマン、ベンジャミン・コーエン、クラーク・アイケルバーガーに注目をする。 ・可能であれば春休みを利用して、CSOP関連の資料を持つコロンビア大学を訪問して文書を入手する。
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