研究課題/領域番号 |
18K01469
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
八丁 由比 九州工業大学, 教養教育院, 教授 (90404095)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 国際連合憲章 / 人種平等 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、平成30年度にアメリカ国立公文書館アーカイブIIで入手した戦後構想に関するファイルを引き続き調査した。特に、国務省内でこの問題に中心的にかかわったハーレイ・ノッターのファイルの文書の中に、恒久的な国際組織の機能、権限、組織の在り方などについて検討をしている文書があり、これを精査した。 文書の中には、特に基本的人権の推進のために検討されたものがあり、国際組織は権限を持つべきか、どのような機構や手段でそれを行うか、普遍的または地域的に行うべきか、またアメリカがどのくらいこれに関与すべきか否かという観点から、国際連盟時代に実施された取り組み、それ以降の取り組み、主要関係国別の提案や議論、政治、宗教その他の団体による提言、元国家元首を含む政治家やジャーナリズム分野におけるキーパーソンごとの言動を分析している。これらは国際連合憲章で結果的に表れた人権、人種平等の考えの背景がいかなるものであったかを知る大きな手掛かりとなった。また、この文書で言及される人権という言葉が具他的に意味する内容について、人種の平等を挙げているケースが予想よりも多いことが分かり、既発表の研究で述べたサンフランシスコ平和会議におけるオブザーバーの働きについて、説得性を高める情報を入手することができた。しかし、ここで見られた人種と言う言葉が具体的に意味する内容については一様でないことが伺われ、個別に調査を深める必要性が再認識された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症の拡大のため、令和2年度に予定していた資料収集を行うことができず、また大学の遠隔授業およびそれに伴う業務量の増加により、研究に割ける時間が大幅に削減された。家庭面でも、配偶者の長期入院と親の介護、また子の在宅遠隔授業と在宅時間の増化により、研究に費やす時間を作ることが困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
・民間の団体ながら国務省と良好な関係を維持し戦後構想に大きな影響を与えたCSOPが、国務省の方針の転換においてどのように対応していたかについて分析を行う。 ・可能であれば長期休業期間を利用して渡米し、CSOP関連の文書を入手する。 ・アメリカへの資料収集が計画通りに行かない可能性を考慮して、日本国内の資料を利用して牧野伸晃らパリ会議の際に人種平等原則を挿入しようとした人物が、国際連合憲章の文言をどのように見ていたかについて調査を深める。
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次年度使用額が生じた理由 |
日本で入手が困難である一次資料を米国図書館等にて取得予定であったが、新型コロナ感染症の拡大により実施することができなかった。使用計画の中の旅費がそのまま未使用となり、翌年度分として請求することになった。渡米が可能になり次第訪問し、資料収集を行う。
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