最終年度にあたる今年度は、これまでの期間に行った研究及びこれまで取得した資料を精査し総括するとともに、1990年代初頭の沖縄の米軍基地の性質変化について、朝鮮半島情勢と関連させて研究を行った。韓国外務部外交史料館および日本外務省外交史料館等での史料調査も実施した。 沖縄対外問題研究会<代表:我部政明(琉球大学名誉教授)>において、本研究テーマで口頭発表を行った。発表タイトルを「冷戦終結と沖縄:北朝鮮核開発との関連性からの考察」と題して、本研究の主テーマでもある冷戦終結が沖縄の米軍基地に及ぼした影響について考察し、下記の2点について詳細な報告を行った。①北朝鮮の核開発は1980年代中盤から、とくに韓国の「クロス承認」政策と関連して開始されたとみられる。②「冷戦終結」を1989年(ベルリンの壁崩壊、マルタ島米ソ会談)や1991年(ソ連崩壊)とみる場合、すでに冷戦終結の段階で、北朝鮮の核開発の兆候があった東アジアでは、冷戦構造の解消可能性はなかった。そのため、沖縄が米ソ冷戦終結から「平和の配当」を受け取る可能性はなかったとみられる。これらについては、韓国外務部、ロシアのゴルバチョフ財団、日本外務省、米国国務省東アジア関連資料などに基づき歴史的考察を行った。 コメンテーターの佐藤学(沖縄国際大学教授)からは、韓国内政との連関性についての質問が寄せられた。また我部政明からは、朝鮮半島と沖縄との結びつきについて刺激的報告とのコメントが寄せられた。さらに、星野英一(琉球大学名誉教授)ら、沖縄と国際政治の関連性を研究する研究者らからも示唆に富むコメントを得た。それらのコメントも受け、現在、総括的な研究報告書を提出する準備を行っている。 沖縄の米軍基地と朝鮮半島の情勢との関連性について国際関係史の視点から指摘できたことは、従来の在沖米軍基地研究の新たな分野の開拓につながったと思われる。
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