研究課題/領域番号 |
18K01471
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研究機関 | 高崎経済大学 |
研究代表者 |
吉武 信彦 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (80240266)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ノーベル文学賞 / スウェーデン・アカデミー / 谷崎潤一郎 / 西脇順三郎 / 三島由紀夫 / 川端康成 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、1950年代末から1960年代におけるノーベル文学賞と日本人候補に焦点を当てた研究を行った。 2019年3月に予定していたスウェーデン・アカデミー、ノルウェー・ノーベル研究所での調査は、新型コロナウィルス感染症のパンデミックで中止せざるを得なかった。2020年度もコロナ禍がますます深刻化し、現地への出張は不可能であった。スウェーデン・アカデミー、ノルウェー・ノーベル研究所が所蔵する開示史料に基づいた実証研究に主眼を置いているため、これは研究の遂行上、大きな痛手となった。 そのため、2020年度は2018年度に現地で集めた史料を読み込むとともに、日本人候補、川端康成、三島由紀夫、西脇順三郎による著作と彼らに関する研究書、論文を読み進めた。谷崎潤一郎については、すでに2020年3月に論文として分析を発表したので、現在は川端、三島、西脇に焦点を当てている。 現時点で、2020年度にノーベル賞に関して活字にできたのは、エッセーの「<世界の街角から>スウェーデンとノルウェーから ノーベル賞の季節」『改革者』(政策研究フォーラム)第723号、2020年10月、51頁のみである。 なお、2020年度は、ノーベル賞からは離れるが、ヨーロッパ諸国の新型コロナ対応に関する総合的研究プロジェクトに参加する機会を得た。これは、新型コロナ問題について日本への示唆を考えた緊急プロジェクトであった。研究代表者は、スウェーデンの新型コロナ対応についてまとめた。スウェーデン社会の根底に流れる合理的思考と死生観を垣間見ることになった。スウェーデン人の思考を知るという意味で貴重な経験となった(担当第Ⅱ部第4章、「スウェーデン―独自路線とEU協調との狭間で」植田隆子編『新型コロナ危機と欧州―EU・加盟10カ国と英国の対応』文眞堂、2021年3月、154~176頁)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症のパンデミックの影響を受け、研究は「遅れている」と言わざるを得ない状況にある。大きく2つの理由がある。
(1)2019年度、2020年度と2年にわたり、スウェーデン・アカデミーなどへの出張が、新型コロナウィルスのため中止となった。国外に出張に行く状況ではなくなった。上記の通り、開示史料の入手、分析という研究のオリジナリティを発揮する部分で大きな打撃となった。 (2)2020年度にコロナ禍はますます深刻化し、1年を通してこれに翻弄された。特に、対面講義からオンライン講義に切り替わったため、講義の準備・実施に膨大な時間をとられ、それに伴い研究時間を削らざるを得なかった。
こうした事情から、研究期間の1年間延長を申請した。現地で確認したい点が多数あり、改めて生の史料を見たいと考えている。2021年度中に是非出張し、追加の史料を入手し、疑問点を解消したうえで、研究をまとめていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、現在手元にあるスウェーデン・アカデミー史料(2018年度に現地で入手)を中心にして、西脇順三郎、三島由紀夫、川端康成の選考に関して分析を継続したい。特に、1965年の谷崎潤一郎の死去後、選考での議論が変化していくプロセスを丹念に追う予定である。この時期、日本人候補は三島と川端に絞られ、川端が徐々に評価を高めたが、その背景を探りたい。
こうした分析のためにも、史料をさらに入手できるよう、スウェーデン出張の可能性を探りたい。コロナ禍の終息次第であるが、それに備えて準備をしておきたい。出張では、1968年までの選考史料で見逃していたもの、1969年、1970年の選考史料なども見ることで、1968年の川端の授賞とその後の余波を考えることができると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度中に予定していたヨーロッパ出張が、新型コロナウィルス感染症のため前年度に引き続き中止となった。そのため、旅費として計上していた分がそのまま残り、研究期間を延長し、次年度に繰り越した。 2021年度中には、是非ヨーロッパ出張を実現したいと考えている。
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