研究課題/領域番号 |
18K01472
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
六鹿 茂夫 静岡県立大学, 国際関係学研究科, 国際関係学研究科附属広域ヨーロッパ研究センター客員研究員 (10248817)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 新冷戦 / EU / 中国 / 17+1 / 一帯一路 / インド太平洋戦略 / EUの欧州=アジア連結性戦略 / 3海イニシアティヴ(3SI) |
研究実績の概要 |
2020年度は新冷戦の多極構造とEUの対中国政策について分析し、以下なる成果を得た。 1.新冷戦の特徴である経済・技術覇権をめぐる競争は、米中および欧州=中国に加え欧米の間でも展開されている。欧米間競争は、バイデン政権誕生目前の2020年12月末にEUが中国と包括的投資協定に調印したことに表れている。多極構造を特徴とする新冷戦の全体像を正確に理解するには、米中の覇権争いのみならず、欧州=中国関係、さらには大西洋関係にも目を向ける必要がある。 2.欧州の対中政策は2016年を境に硬化し、EUは2018年9月に欧州=アジア連結性戦略を採択し、翌年4月には投資スクリーニング法を発効させた。また、同年3月には中国を体制上のライヴァルと規定し、経済のみならずイデオロギー上での対立姿勢を鮮明にした。 3.パンデミックのさなかに中国が展開した戦狼外交を受け、EUは対中制裁に踏み切るなど対中政策をいっそう硬化させた。中国が民主主義やEUの危機を煽ったり、欧州の対中傾斜は不可避であるとの宣伝戦を展開したり、香港、台湾、新疆ウィグル、南シナ海でいっそう強硬な政策をとるに至ったからである。また、中国国内で一部商品の製造が停止され、欧州で医療関連物資をはじめとする生活必需品の供給が滞ったため、対中依存を軽減しサプライ・チェーンを分散化すべしとの論調が高まった。そして、2021年4月にEU閣僚理事会がインド太平洋戦略に関する指針を採択し、9月までにそれを具体化するようボレル外交安全保障上級代表と欧州委員会に要請した。一帯一路と「17+1」を介して中・東欧や西バルカンに影響力を強める中国に対して、EUが防戦から攻勢に転じたのである。 4.このようなEUの対中政策は、欧州で高まる中国の影響力への対応策として、EUのグローバル戦略の一環として、さらには米中新冷戦におけるEUの自立性強化策として打ち出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVID-19により欧州における海外調査ができなかったため、「17+1」の対象国であるバルト諸国、中・東欧、西バルカンにおいてEU、中国、米国、ロシアが展開する国際政治の実態を明らかにすることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、引き続き、欧州におけるヒアリング調査を計画しているが、欧州への渡航がCOVID-19により不可能な場合は、他地域での現地調査によって補完できないか、その可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に計画していた海外調査がパンデミックによって実現できなかったため、渡航費が次年度に繰り越されるに至った。次年度も引き続き海外調査を計画しており、同計画にしたがって使用する意向である。
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