この研究は、冷戦初期にイギリスがアジアにおいてどのような政治的広報政策を展開していたかを明らかにすることを目的としている。第二次世界大戦のイギリスは、経済力・軍事力の低下を原因として国際外交の場において影響力を減退させたため、外交政策を補完するための政治的広報政策を重視するようになった。本研究は、その政治的広報政策にあたって中心的な役割を果たした外務省情報調査局(Information Research Department:以下IRD)のアジアにおける活動を調査する初の研究である。このようにIRDの活動を明らかにすることは、イギリスの対アジア政策全般を見直す契機となり、アジア国際秩序においてイギリスが果たした役割を再検討することにつながる。本研究は、一次資料と二次資料を併用し、それらを考察することによって研究を進める。一次資料はおもにロンドン(英国)にある英国国立公文書館で収集し、二次資料はこの分野の研究書を利用する。 研究計画を開始して2年間はこの計画通りに実行し、平成30年度は研究論文1点、平成31(令和元)年度は研究論文2点の公表と研究会報告1点を行った。ただ、令和2年度は新型コロナ感染症の感染拡大により教育活動の比重を高めざるをえず、研究成果の公表はアジア国際秩序に関する研究論文1点に限定された。令和3年度は、平成30年度・令和元年度に収集した資料を利用して研究の比重を高め、研究論文2点を発表した。それ以外に令和3年度中に執筆した研究論文1本・書評1本が現在、投稿した学術誌で査読対象となっており、掲載が認められれば令和4年度に発表される。また、令和3年度中に完成できなかった研究論文2本が近い将来に学術誌に投稿される見込みである。
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