研究課題/領域番号 |
18K01475
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
松本 佐保 日本大学, 国際関係学部, 教授 (40326161)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | バチカン / 国際機関 / 紛争解決 / 平和構築 / 宗教と政治 |
研究実績の概要 |
バチカンは、国連や国連専門機関である国際機構、また国連などとパートナーシップ関係にあるキリスト教系のNGOとの関係を通じて、国際的な紛争、とりわけ宗教紛争に関わる問題に関与している。また紛争終結後の地域においても、そこにおける平和構築に教会などの活動を通じて関わっている。これらの事例を、この間はコロナ感染症の拡大で、海外に史料及びインタビュー調査に出かけることは出来なかったが、オンラインで行われた講演会や学会での討論などを通じて、研究活動を行った。国際政治学会のアメリカ研究分化会で、討論者として中国での宗教弾圧に対するバチカンの外交について論じた。また11月に行われた角川文化振興財団と上智大学との共催で、「バチカンと日本 100年プロジェクト」のプログラムのひとつとして、ヴェールに包まれていたバチカンと日本の450年を紐解く公開シンポジウムを、2021年11月13日(土)で「教皇ピウス12世と日本との外交関係 ―バチカンと国際法:戦前・戦中・戦後日本への法・政治・宗教規範の影響」で研究発表を行った。 また同志社大学一神教研究所で行われたオンライン・シンポジウムでは、バチカンとアメリカのカトリック教会の関係などについて研究報告を行った。そして京都大学イスラーム地域研究センター(KIAS)のオンライン研究会では、イスラム教のヨルダン王国におけるキリスト教との宗教間対話に関する発表に対して、討論者としてキリスト総本山バチカンのイスラム教との宗教間対話の重要性の観点から議論した。同志社大学一神教研究所の発行する学術雑誌と、京都大学イスラーム地域研究センター(KIAS)の発行する学術雑誌にそれぞれ内容が掲載されたが、刊行されたのは2022年の4月以降であった。バチカンも関与するアメリカのカトリックやプロテスタント教会と政治の関係については、共著の書籍が2月に刊行された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ感染症の拡大で、海外出張が禁止されており、史料及びインタビュー調査に出かけることは出来なかったため、研究の進捗状況はやや遅れている。しかし国内にいて出来る限りの研究活動、オンライン開催の講演や学会に参加して、登壇者として研究報告を行ったり、討論者として参加するなどの可能な範囲での活動と業績の発表は行った。その結果、共著の図書の刊行や、学術雑誌への論文の掲載が実現したが、後者に関しては刊行が2022年度の4月以降となった。 またバチカン公文書館では、これまで堅く封印され非公開だった教皇ピウス12世ファイルが1年前に公開され、本史料はコロナ感染症拡大の最中に公開されたこともあり、海外出張が禁止されている状況では、現地に行くことが出来ず、新公開史料の閲覧と史料調査に関しては世界に遅れを取ることになったのは残念なことである。しかし22年度にバチカンでの史料調査が許されるなら、遅れを挽回出来る余地は十分にある。欧米での教皇ピウス12世ファイルへの主な関心は、ドイツ関係のものであり、日本やアメリカとの関係、また国連などの国際機関との関係については、まだ新しい史料を使用しての研究成果はまだ発表されていないからである。
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今後の研究の推進方策 |
今後はバチカン公文書館に出向き、これまで堅く封印され非公開だった教皇ピウス12世ファイルを集中的に調査する必要がある。海外での史料調査が解禁されれば、これに出かけて新公開史料の閲覧と史料調査を通じて、世界に遅れを取らない様に、論文や研究書の刊行に繋げていく予定である。22年度にバチカンでの史料調査が許されるなら、コロナ感染症拡大で海外での調査が行えなくなった遅れを挽回するために、努力する方針でいる。欧米での教皇ピウス12世ファイルへの主な関心は、ナチスドイツとバチカンとの関係のものであり、日本やアメリカとの関係、また国連などの国際機関との関係については、まだ新しい史料を使用しての研究成果は殆どまだ発表されていないことから、研究の進捗状況の遅れを取り戻す予定でいる。 最新の史料は使用していないものの、以前のバチカンでの史料調査で入手した史料を使用し、英語の共著本Vatican and Neutralityが間もなく刊行される。刊行は22年度になるが、本共著本の執筆は21年度中に行い、また本書を完成するプロセスで、アメリカのワシントンにあるアメリカ・カトリック大学とオンラインで何度も研究打ち合わせを行った。本書はアメリカの同分野の研究の最先端にいる研究者たちとの共著であることから、本書が刊行されれば、今後、バチカンの国際機関への関与や平和構築のコミットメントに関わる研究がより推進される可能性が高く、本研究課題の発展にとって大きな意味を持つことになるであろう。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症の拡大によって、海外での史料調査及び研究発表、国際会議の開催、これら全てを行うことが不可能、もしくは禁止されたために、次年度に予算が持ち越された。 来年度は海外出張による海外での史料調査及び研究発表や、研究交流や国際会議の組織などに関して、許可が出れば、これらを実行に移し、それにあたって予算が使用される見込みである。
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