研究課題/領域番号 |
18K01476
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
倉科 一希 広島市立大学, 国際学部, 准教授 (00404856)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 核兵器共有 / NATO / 冷戦 / 同盟 |
研究実績の概要 |
2019年度における研究実績としては、アメリカにおける史料調査および非公開の研究会における研究発表、さらに2020年度の国内学会誌投稿に向けた準備があげられる。史料調査については、国会図書館や国内他大学の所蔵する史資料の閲覧、およびジョンソン大統領図書館における史料調査を行った。これらの作業によって、アメリカのジョンソン政権が核兵器共有とそれ以外の問題をどのように位置づけ、核兵器共有の解決によってどのような成果を得ようとしていたのかを明らかにした。とくにジョンソン大統領図書館では、大統領の側近で対外政策にも一定の発言をしていたビル・モイヤーズの文書を確認し、彼が核兵器不拡散条約(NPT)交渉を支持する立場をとり、政権内の政策論争に明確な立場をとっていたことを確認できた。 また、2月7日に京都大学で開催された非公開の研究会に参加し、"The Harmel Report and the NATO Crisis of 1966"というタイトルで、1966年前半におけるジョンソン政権のNATO再編計画を検討した。この問題は、アメリカ政府による核兵器共有の位置づけを理解するうえで重要な前提となった。 最後に、2020年秋出版の日本国際政治学会『国際政治』への投稿を目指し、史資料の検討と原稿作成を進めている。また、本研究およびこれまでの研究の成果を総合した、ジョンソン政権のNATO・NPT政策に関する著書の原稿作成を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アメリカのジョンソン政権によるNATO政策、とくにフランスのNATO軍事機構脱退を契機とするNATO再編策を検討することによって、ジョンソン政権が核兵器共有をどのような文脈で理解していたのか、相当程度まで明らかになった。とくにNATO再編に関する史料を十分に収集できたため、現在ではアメリカの政策に関する概要を把握できたと考えられる。 またこの史料調査で得た知見については、非公開の研究会で発表してコメントなどを得ており、これらの評価を踏まえた修正を進めている。 ドイツの史料については、これまで収集した史料の分析を進めている。その一方、これまでの調査では確保できなかった史料については、依然として収集できていない。また、イギリスやNATO、ヨーロッパ統合に関する史料収集も2019年度には実施できなかった。これらヨーロッパにおける史料調査については、2020年度に実施予定であった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度には、現在までの研究状況に基づいた学会誌への投稿および学会報告を実施する予定である。具体的には、国際政治学会『国際政治』への投稿応募を済ませており、5月の締め切りまでに投稿を完了する予定である。 ヨーロッパにおける史料調査については、もともと2020年度に実施予定であった。しかしながら、現在の感染症流行によって夏の史料調査は実施を断念せざるを得ない。現時点では、年度末の実施を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が発生したのは、本研究と同時に採択された研究分担者としての研究との調整が最大の理由である。研究班内の2019年度作業予定を踏まえ、研究分担者として予定より多くの研究費配分を受けることとなった。また、これらの研究費によって、合計二回の海外史料調査を行った。その結果、本研究による史料調査などの研究活動を予定より抑えざるを得ず、その結果として次年度使用額が発生した。 2020年度については、研究分担者としての研究費を抑え、主に本研究に集中する予定である。具体的には、二回にわたる海外史料調査および首都圏・関西圏における史料調査、学会や研究会への参加・研究報告を予定している。
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