研究課題/領域番号 |
18K01477
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研究機関 | 獨協大学 |
研究代表者 |
浦部 浩之 獨協大学, 国際教養学部, 教授 (30306477)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 選挙監視 / 欧州安保協力機構 / PKO / 内戦 / 和平合意 / ウクライナ / エルサルバドル / ボスニア・ヘルツェゴビナ |
研究実績の概要 |
平成31年(令和元年/2019年)度は平成30年度に続き、国際的な選挙監視活動の機能(成果・意義)と逆機能(マイナスの効果)を分析する枠組みの確立とデータベース化、および代表者自身が参加経験をもつ選挙監視活動の事例研究を進めることを中間目標として研究を進めた。 具体的には、まずウクライナで2014年5月に行われた大統領選挙、および同年10月に行われた最高議会選挙について、選挙監視活動を実施した欧州安保協力機構(OSCE)、ウクライナ中央選挙管理委員会、同国国勢調査などの公文書や基礎データなどの収集をおおむね完了するとともに、事例研究の成果を2つの論文として公表した。なおデータベース公開用のプラットフォームの開設を目ざして作業を進めていたところ、ちょうど所属機関の学内ウェッブサーバー移設計画と重なったために実現していないが、近く開設の予定である。 また、とくに日本による選挙監視活動参加の黎明期の事例であるボスニア・ヘルツェゴビナ、およびエルサルバドルに関する研究を深めるために、前者については令和元年2019年8~9月に、後者については2020年2~3月に現地調査を行い、内戦終結から和平合意締結、そして選挙にいたる一連の過程に関わる関連施設の訪問や資料収集などを行った。エルサルバドルに関しては、昨年度に収集したデータベースを補完する調査である。インターネットが普及していない時期のデータ収集に困難があることは昨年度の研究実績の概要でも述べたとおりであり、選挙監視を行った国連平和維持活動(PKO)のデータなど、不足を補う必要があるが、選挙監視に関する包括的な分析の準備はかなり整った。ボスニア・ヘルツェゴビナに関しては研究の初期段階にあるが、非常に重要な事例であるので次年度の研究につなげていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
米州のエルサルバドルと欧州のウクライナを事例として、選挙監視活動に関する比較研究のために今後、どのように基礎情報や公的資料を収集し整理していけばよいのか、一定の見通しを立てることができた。2014年のウクライナでの選挙監視活動に関する論文を2本公刊したが、長年ラテンアメリカ地域の研究に注力していた筆者にとって、欧州に関して執筆した初めての公刊論文となった。バルカンに関する事例研究も、その第一歩を踏み出せた。他方で、グアテマラ、ホンジュラス、ベネズエラなどでの現地調査が、時間不足、および治安情勢が理由で当初計画どおりには行えなかった。なお、予算の面では本助成金と関連をもつものではないが、2019年4月、欧州安保協力機構(OSCE)ウクライナ大統領選挙(決選投票)監視団に参加する機会に恵まれ、実地での体験を通じ、現地調査の不足分を思わぬかたちで補うことができた。このことについて付記しておきたい。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は当初計画のとおり、研究対象国における選挙監視活動のデータベース化を進め、専用のWebサイトを開設したい。また国連や米州機構(OAS)、欧州安保協力機構(OSCE)などによる選挙監視に関する理念の変遷についての分析を深めたい。 なお、このほかにバルカン諸国や中米諸国での現地調査を行う予定であるが、2020年5月現在、新型コロナウィルスの問題でいずれの国においても入国禁止措置が取られており、年度内の訪問が可能か否か、見通しが立たない。幸いあと2年の研究期間があるので、事態を注視し、また安全を最優先に考え、場合によっては来年度に先送りすることも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査が当初予定よりもやや小規模なものとなったため未使用額が生じたが、当初の執行計画からの大きな乖離はない。新型コロナウィルス問題の発生のために次年度の現地調査の可否にやや不透明感はあるものの、基本的には当初予定どおりに研究を遂行し、適正に執行する予定である。
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