研究課題/領域番号 |
18K01479
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
新垣 修 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (30341663)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 無国籍 / ナンセン・パスポート / 国籍の剥奪 / 代理出産と無国籍 / 気候変動と無国籍 |
研究実績の概要 |
当該年度においては、現地調査(ジュネーブ、コペンハーゲン)と文献調査を実施することにより、無国籍に関する規範の内容やアクターの認識、実際のオペレーションなどを中心に検討した。対象に定めた主な時代は、1920年代と1930年代であった。具体的には、ベルサイユ体制の確立から国際協調主義の崩壊といった国際環境の変化を念頭に置きつつ、以下のことを行った。 第1に、戦間期の国際文書の中から無国籍の要素を探った。調査対象としたのは、1922年「ロシア難民に対する身分証明書の発給に関する取極」と1924年「アルメニア難民に対する身分証明書の発給に関する計画」、1928年「ロシア難民及びアルメニア難民の法的地位に関する取極」、1928年「ロシア難民及びアルメニア難民にとられた一定の措置を他の範疇の難民に拡張することに関する取極」、1933年「難民の地位に関する条約」、1938年「ドイツからの難民の地位に関する条約」であった。特に、現代の国際実行(無国籍者の概念、保護、防止、削減)に通ずる事柄に着目して調査を行った。 第2に、意思決定手続やオペレーションにおける無国籍の位置付けを探った。実践の計画と意思決定のフォーラムとして、国際連盟下で設立された組織、難民高等弁務官事務所を取り上げた。その設立背景を確認した上、オペレーションであるナンセン・パスポート発給や経済自立支援プログラムに関する資料を収集し、無国籍に関する規範の形成やアクターの認識について考えた。 第3に、戦間期より継承された無国籍の要素が伏在している現代的事象(国籍の剥奪、代理出産と無国籍、気候変動と無国籍、保護の観点からの無国籍の維持)について検討し、その結果を成果として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、現地調査(ジュネーブ、コペンハーゲン)では、関連の課題に精通している有識者・実務家などにインタビューすることができ、文書化されていない情報を入手することができた。また、欧州における文献調査では、貴重な第一次資料にアクセスすることができた。 以上から得られたデータの検証であるが、1920年代については計画通りか、それ以上の進捗があった。他方、1930年代については、時間配分とデータの質の問題により、計画に遅れが生じた。 現代的事象(国籍の剥奪、代理出産と無国籍、気候変動と無国籍、保護の観点からの無国籍の維持)の検討については、当初の計画では補足的位置付けであったものの、予定より早く成果に結びつけることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は最終年度にあり、12月には国内外より有識者を招いてセミナーを開催し、研究結果を対外的に発信する予定である。ただし、昨今のCovid-19の影響により、当初計画していたイメージ通りにこれを実施できるかは、現在のところ不透明である。参加予定者の意向なども勘案し、オンラインにより遠隔セミナーや活字データのみのやりとり・事後の公開、会議自体の中止といった選択肢も念頭において、計画を柔軟に変更できるようにしておきたい。 なお、成果品(報告書)は計画通り完成させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度においては、工夫して物品費を若干抑えることができた。次年度の物品費で調整したい。
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