研究課題/領域番号 |
18K01483
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
川村 陶子 成蹊大学, 文学部, 教授 (80302834)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 国際関係論 / 文化政策 / ドイツ / 日本 / 文化外交 / 移民統合 / 多文化共生 / 文化交流 |
研究実績の概要 |
本研究では、多様な文化的背景をもつ〈ひと〉が交錯する国際社会の安定と創造的発展のための政策実践のあり方を、ドイツの経験にもとづき総合的に検討する。異なる政策分野で行われる文化の伝達・交流・振興を、国際関係運営の文化的運営行為として調査分析し、新しい理論枠組みの構築にもつなげていく。 2021年度も、コロナ禍により海外・国内出張を伴う調査研究や成果報告は断念した。 その一方で、感染症の影響が長期化する展望を鑑み、当初計画のアプローチ(ドイツの今日的状況の調査分析)とは異なる切り口で「ドイツにおける国際文化関係運営の政策実践」というテーマに取り組む方向で研究態勢を立て直した。 具体的には、(1)これまで研究代表者が長年断片的に行ってきた20世紀後半以降の(西)ドイツ対外文化政策分析の成果を「国際文化関係運営の発展史」という枠の中でまとめ直し、その意義を考察すること、(2)ドイツの国際文化関係運営と日本のそれを比較検討し、国際文化関係運営の多様な展開状況を分析すること、の2つの作業を行うこととした。 2021年度は、(1)に関して、西ドイツの対外文化政策の展開を「ゆるい〈文化外交〉」というキーワードで総合的に分析評価する大部の論文(原稿)を執筆した。(2)に関しては、国際文化関係の運営への〈くに〉(国家、政府)の関与を文化関係政策(cultural relations policy)と位置づける理論枠組みを提唱する小論を執筆、出版した。 前年度に引き続き研究費は使用しなかったが、「国際社会の安定と創造的発展のための文化政策の実践」に関し、より総合的な視点から分析考察する研究態勢をつくり、今後につながる成果を挙げることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍により当初予定していた出張調査等を実施することはできなかったが、研究代表者がこれまで行ってきた調査分析の成果も活用しつつ、プロジェクトのテーマであるドイツの国際文化関係運営の政策実践をより総合的な視点(幅広い歴史的スパンでの検討、比較分析)で検討する態勢を整えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度以降は、2021年度に整えた2本柱(歴史的分析、比較分析)の態勢で、ドイツにおける国際文化関係運営を総合的に分析・考察し、成果を適切な形で公表していきたい。 出張を伴う調査や成果報告、とりわけ海外への出張は、今後もしばらく実施のハードルが高いことが予想される。機会を作れた場合はそのチャンスを活用する一方、オンラインツールも利用し、日本の事例分析も取り入れるなど、可能な形で研究を進める。また、2021年度に執筆した大部の原稿をブラッシュアップし、20世紀後半以降のドイツ対外文化政策を大きな視点で分析評価する論考をまとめ、成果公表に向けた作業を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度からの繰り越し金および2020、2021年度の交付金について、コロナ禍のため出張を伴う研究関連の支出がなかったため、全額を翌年度以降に繰り越した。 2022年度は機会をとらえ、可能な限り現地調査や成果報告等を実行したい。しかし、とりわけ海外への出張は、今後もしばらく以前のようには実施できないかも知れない。これまで繰り越してきた研究費もかなりの金額にのぼっており、単年度では交付金を使い切れない可能性が高い。 今後は研究期間延長等の選択肢も視野に入れ、新たな研究態勢にあわせて無理のないペースで研究を行いたい。
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