研究課題/領域番号 |
18K01484
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
稲田 十一 専修大学, 経済学部, 教授 (50223219)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 中国の援助 / 北京コンセンサス / 国際援助体制 / 一帯一路 |
研究実績の概要 |
アジアにおける中国の援助の実態を具体的に把握・収集し、その経済社会及び政治外交上のインパクトを検証・分析する上で不可欠なのが、具体的な対象国での現地調査である。2018年度は、近年、中国から多額の経済支援・借款を受け入れ、中国への過度の経済的依存と債務の拡大、および中国の地政学上の野心が国際的に議論となっているスリランカの現地調査を、2019年2-3月に実施した(11日間)。現地調査では、日本のスリランカ専門家・大学やNGOのネットワーク等を活用しながら、スリランカの大学・進出日本企業・現地の事業主体・NGOや住民組織等にヒアリングを行い、スリランカでの中国の進出状況を実査し、関連資料・情報・統計を収集した。 また、中国の援助や経済的プレゼンスの拡大が既存の国際援助体制の中でどのようにとらえられているか、その実態と課題は何か等について関連情報・資料収集をするために、米国(ワシントンDCおよびカリフォルニア州)での現地調査を2018年8月に実施した(13日間)。世界銀行や米国のシンクタンク・研究機関・大学などの専門家・実務家にヒアリングするとともに関連資料を収集した。 また、中国の「一帯一路」政策の実態とその影響についての情報収集のため、インターネットの関連サイト(米国のRWR Belt and Road Monitorなど) へのアクセスや関連文献の購入などを通じて数多くの関連文献・資料を入手した。また、関連セミナー(日本一帯一路研究センターのセミナーやJICA研究所の関連テーマのセミナー等)への参加を通じて、本テーマについての最近の研究調査動向を把握し、関連研究者の研究成果を確認するととも、研究ネットワークの拡大に努めた。 なお、本科研テーマに関連する研究成果(英文)の発表・報告(英語)を、2018年7月および同年12月に実施した。(学会報告の欄を参照)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、アジアにおける中国の援助の実態・関連データを具体的に把握・収集し、そのインパクトを検証・分析するための現地調査の具体的な対象国として、ミャンマーをあげていたが、2018年度には、ミャンマーに代えてスリランカでの現地調査を実施した。スリランカは中国の経済支援とそのインパクトを分析する上で極めて重要な研究対象であり、内容の濃い現地調査を実施することができた。 また、当初計画では、中国の援助や経済的プレゼンスの拡大が既存の国際援助体制の中でどのように位置づけられるか、その実態と課題は何か等についてについて関連情報・資料収集をするために、中国での現地調査を計画していたが、米国での現地調査を先行させた。こうした米国での調査や日本国内での文献調査・関連セミナーへの出席等により、情報収集はかなり進んだ。 なお、本科学研究費以外の予算を使って、2018年4月にラオス、同年9月にアンゴラにて現地調査をする機会があり、その機会に、ラオスやアンゴラにおける中国の事業を実査するともに中国の経済支援や関連事業のインパクトについてヒアリングや情報収集をする機会を得ることができ、本研究を進める上でも大いに役立った。
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今後の研究の推進方策 |
アジアにおける中国の援助の実態を具体的に把握・具体的データを収集し、そのインパクトを検証・分析するための具体的な対象国として、2018年度に現地調査を実施したスリランカについては、その研究成果を『専修大学・社会科学研究』にて論文として掲載予定である。なお、当初計画で予定していたミャンマーでの現地調査についても、引き続き実施を計画している。 また、中国の援助や経済的プレゼンスの拡大が既存の国際援助体制の中でどのように位置づけられるか、その実態と課題は何か等については、文献調査や関連セミナー等への出席を通じて引き続き関連情報・資料収集するほか、中国での現地調査についても引き続き実施を計画している。 なお、中国の一帯一路事業や経済支援が国際開発援助体制に与えるインパクトや途上国の経済社会や政治外交に与える影響・課題については、2019年中に、いくつかの学会(International Political Science Association等)で英語論文として発表・報告を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度に実施した2回の現地調査(スリランカ11日間、米国13日間)のいずれも、現地調査の補助のため、現地研究者や通訳に要すると予想された経費(人件費・謝金)が不要であったことが最大の要因である。米国の現地調査は、英語圏であることに加え、研究代表者である私自身がヒアリングのアレンジを行った。スリランカについては、英語が公用語であることに加え、現地調査のアレンジについては、専修大学・社会科学研究所の支援を受けることができた。 また、2018年度に実施した2回の国際学会での、本科学研究費の関連テーマの論文発表・報告の旅費については、本科学研究費以外の予算を使うことができた。 2018年度内に使用しなかった予算については、2019年度において、主として現地調査の追加費用として使用する予定である。
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