本研究で焦点をあてたのは、中国の対外経済協力の拡大が開発途上国の経済社会や政治外交にいかなる影響を与えているのかという点であり、特にカンボジア、ラオス、ミャンマー、スリランカ等の中国の経済支援の影響が大きいアジア諸国を事例として取り上げ、以下のような論点について検討した。 ①拡大する中国の経済的プレゼンスの実態把握、②中国の援助拡大とその経済社会および政治外交面でのインパクトの評価、③中国の援助の国際援助コミュニティとの非(ないし没)協調の持つ意味と功罪、④「中国型開発モデル」「北京コンセンサス」の内容とその国際的影響。 これらの論点を具体的に検証するために、カンボジア・ラオス・ミャンマー・スリランカという中国の援助の影響力が拡大してきた国々を事例として取り上げ、実証的に検証した。また、各国に焦点をあてた国別事例研究に加えて、「一帯一路」イニシアティブやAIIB(アジアインフラ投資銀行)などの中国が主導する地域経済協力の枠組みについても、文献調査および専門家などへのヒアリング等を通じて、それらが既存の国際的枠組みとどのような対抗関係あるいは補完関係にあるかについて分析・検証した。 具体的な国別現地調査として、2019年3月にスリランカ、2020年2-3月にミャンマーでの現地調査を実施した。また、その研究成果は、「中国「一帯一路」事業のスリランカへのインパクトとその評価」『専修大学社会科学研究所・月報』2019年8-9月号(No.674-6759 、「ドナーとしての中国の台頭とそのインパクト-カンボジアとラオスの事例」金子・山田・吉野編『一帯一路時代のASEAN』明石書店(第7章)、などの他、最終年度の2024年3月に『一帯一路を検証する-国際開発援助体制への中国のインパクト』明石書店、の単行本としてとりまとめた(その印刷・製本費を本科研最終年度予算より支出)。
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