研究課題/領域番号 |
18K01485
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
清水 聡 玉川大学, 経営学部, 非常勤講師 (50722625)
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研究分担者 |
羽場 久美子 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (70147007)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 冷戦史 / 国際政治史 / 講和問題 / 独ソ関係 / 戦後日本外交史 / ソ連外交 / 極東情勢 / 欧州情勢 |
研究実績の概要 |
2年目は、以下の3点を実施した。(1)極東・欧州関係史研究会の開催。研究会において研究の推進方策について意見調整を行った。その上で、杜(研究協力者)が「1950年代の欧州国際政治とアジア―東欧の大衆蜂起と中国」(2019年12月21日)について、また、清水(研究代表者)が「朝鮮戦争と冷戦―日独比較」(2019年12月21日)について、それぞれ研究報告を実施した。討論の際に、羽場(研究分担者)から、極東情勢と欧州情勢に影響を及ぼしたアメリカ外交について、その特徴が指摘され、それにより多面的な研究の視座が得られた。 (2)個別の研究課題について情報収集と史料収集を実施したこと。清水(研究代表者)はドイツ連邦文書館(ベルリン)において、ドイツ連邦共和国(西ドイツ)とソ連との対外政策の調整過程について、戦時捕虜に関わる史料を発見し、分析を進めた。 (3)研究成果の公表。清水(研究代表者)は図書『国際政治論:グローバリゼーションと日本政治外交』(DTP出版、2020年3月16日)を出版し、そのなかで「冷戦と講和」、「『欧州の冷戦』と『極東の冷戦』」そして「冷戦の変容と国際政治」などをまとめた。その他、清水は雑誌論文「極東情勢と欧州情勢の連関―1950年代の国際政治とソ連外交―」(『論叢:玉川大学経営学部紀要』第31号、2020年3月20日)を執筆した。また、杜(研究協力者)は日本国際政治学会(2019年度研究大会)において「1956年ハンガリー事件と中国共産党―ハンガリー事件における中国共産党の関与と役割」(2019年10月20日)について、さらにISA Asia-Pacific(Conference 2019, Singapore)において“Hungarian Incident and the Democracy of China”(2019年7月6日)を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目は、ドイツ連邦文書館において、東西ドイツとソ連との対外政策の調整過程について情報収集と史料収集が進み、また極東・欧州関係史研究会が開催され、その過程で羽場(研究分担者)から、研究水準を向上させるために日ソ共同宣言(1956年)やハンガリー動乱(1956年)の研究、すなわち「冷戦」から「冷戦の変容」へと至る経緯を解明させる必要が指摘され、精緻な研究が進んだ。 また研究成果の公表が進み、清水(研究代表者)は図書『国際政治論:グローバリゼーションと日本政治外交』を出版し、雑誌論文「極東情勢と欧州情勢の連関―1950年代の国際政治とソ連外交―」を執筆した。羽場(研究分担者)は雑誌論文として、‘Conflict and Economic War between the US and China : Power Transition and the War in East Asia : How to Avoid Conflicts and How to Establish Collaboration’(『Aoyama Journal of International Studies』7巻、2020年1月15日)を執筆した。さらに、杜(研究協力者)は研究成果として、「1956年ハンガリー事件と中国―ポーランド事件との比較の視点から―」(現代史研究会)、“Hungarian Incident and the Democracy of China”(ISA Asia-Pacific)、「転換期の中国政治―1950年代の中央書記処と大衆運動を中心に」(北東アジア学会関東地域研究会)、「1956年ハンガリー事件と中国共産党―ハンガリー事件における中国共産党の関与と役割」(日本国際政治学会)を、それぞれ報告した。 個別の研究が着実に進み、次年度以降、研究を総合化させる上での基礎が準備された。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については、以下の5点が推進方策である。(1)個別の情報収集と史料収集を継続すること。清水(研究代表者)は、外務省外交史料館での史料収集を進め、極東情勢(日本)の動向を把握し、ソ連の講和問題と国際政治との関連について分析を進める。羽場(研究分担者)は、アメリカの欧州戦略と極東戦略とを比較し、冷戦の構造を分析する。杜(研究協力者)は、中ソ関係の展開を解明することを目的として、情報収集と史料収集を継続する。 (2)研究の精緻化。極東情勢と欧州情勢の連関(1950年代の国際政治)に関する研究課題は、精緻な分析が求められる。研究の推進方策としては、極東情勢と欧州情勢の展開を時系列に沿って入念に比較検討する作業が求められ、この作業を引き続き中心課題の一つに据える。また、今後は各国指導者の世界観についても焦点を当てる。 (3)個別に進められている研究を総合化させるために、学会において、パネルの設置を目指す。その際、「地域統合の起源」という視点に注意し、極東の分断と欧州の統合が、米ソの世界戦略の展開のなかで、どのように形作られたか探る。 (4)極東・欧州関係史研究会の開催。研究会の開催により、2年目は複数の知見が得られた。引き続き研究会を開催し、討議を継続する。 (5)研究成果の公表。研究成果を、研究報告(研究会、学会における報告)、研究論文(学会誌、紀要)として公表する。十分な情報収集と史料収集、ならびに実証研究として確立した分析がなされた研究成果については、それを順番に発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、研究会の開催のために会場を確保する予定であった(会場費の支出を想定していた)。しかし、青山学院大学(羽場研究室)において研究会を開催することへと変更となった。そのため、会場費が不要となり、残額が生じた。また、香港民主化デモ(2019年)の影響により、香港において、杜(研究協力者)が予定していた情報収集と史料収集を、変更(ないしは次年度以降に延期)することとなり、残額が生じた。 次年度使用額については、情報収集と史料収集の一部として活用する。とくに、1956年の冷戦構造の展開について検討するために、次年度は、国内において調査活動を進め、また、基礎的な史料の翻訳作業に重点を置く。
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