研究課題/領域番号 |
18K01485
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研究機関 | 開智国際大学 |
研究代表者 |
清水 聡 開智国際大学, 国際教養学部, 准教授 (50722625)
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研究分担者 |
羽場 久美子 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (70147007)
山本 健 西南学院大学, 法学部, 教授 (70509877)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 冷戦史 / 国際政治史 / 講和問題 / 独ソ関係 / 戦後日本外交史 / ソ連外交 / 極東情勢 / 欧州情勢 |
研究実績の概要 |
3年目は、個別の課題について1~2年目に収集した情報と史料を分析し、研究が進められた。また研究組織の拡充を目指し、欧州国際政治史を専門とする山本(研究分担者)の参加を得ることができた。この結果、より精緻な研究結果を得られる環境が整えられた。 清水(研究代表者)は、日本政治学会にて「「地域統合の起源」を探る:1950年代の国際政治と冷戦」を企画し、また報告者として登壇して研究成果の一部を発表した(日本政治学会研究大会・2020年度、2020年9月26日)。報告タイトルは「「地域統合の起源」と戦後ソ連の講和構想―日独比較の視点から」であり、そのなかで、ソ連の対日講和案(1951年9月5日)とソ連の対独講和案(1952年3月10日)とがグロムイコを中心にまとめられ、類似した内容となっていることを指摘した。また、研究論文(紀要)を執筆した。 羽場(研究分担者)は、日本政治学会(2020年9月26日)で、「「地域統合の起源」とアメリカの対欧州戦略―極東戦略との比較分析」をテーマに報告を行った。とくに冷戦初期のアメリカの対欧州戦略と対極東戦略との比較分析のなかで得られた知見を、今日の国際政治の展開に関連づけて報告した。 山本(研究分担者)は、ヨーロッパにおける冷戦を、陣営と緊張緩和という概念を軸に再検討をおこなった。そして、東西関係と、東西両陣営の同盟内政治の相互作用を中心とした、ヨーロッパ冷戦に関する通史を執筆し刊行した。 杜(研究協力者)は、日本政治学会(2020年9月26日)で、「「地域統合の起源」と中ソ関係の展開―欧州の冷戦と極東の熱戦」をテーマに報告を行った。その報告のなかで杜は、地域統合の背景における中ソ関係の展開に着目し、戦後、ソ連の対日講和の構想における中ソ関係の交渉と中国の政策を、旅順港のソ連軍隊の撤退問題をはじめとする事例から、明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年目は、ドイツ連邦文書館において収集した東西ドイツとソ連との対外政策の調整過程に関する情報と史料の分析が進み、また日本政治学会における報告準備の過程で、極東と欧州の連関を解明させる必要が、研究組織のなかから指摘され、精緻な研究が進んだ。またコロナ危機における世界的な移動制限のなかで、現地調査からオンライン調査へと切り換え、欧州の文書館においてオンラインで公開している情報と史料の分析に重点を置いた。学会報告の準備の際にも、オンラインによる意見交換が進められた。 また研究成果の公表が進み、清水(研究代表者)は研究成果として、「「地域統合の起源」と戦後ソ連の講和構想―日独比較の視点から」(日本政治学会)を報告し、また雑誌論文「「ソ連・東欧圏」における経済改革と政治危機:1960年代のドイツ政治外交と「プラハの春」」を執筆し、そのなかで「ソ連・東欧圏」における東ドイツの位置づけを探った。山本(研究分担者)は、図書『ヨーロッパ冷戦史』(筑摩書房、2021年)を出版し、また「「地域統合の起源」を探る:1950年代の国際政治と冷戦」(日本政治学会研究大会、研究交流委員会企画、2020年9月26日)において討論を担当し、研究上の問題点を指摘した。羽場(研究分担者)は研究成果として、「「地域統合の起源」とアメリカの対欧州戦略―極東戦略との比較分析」(日本政治学会)を報告し、冷戦初期のアメリカの対外政策を分析した。さらに杜(研究協力者)は研究成果として、「「地域統合の起源」と中ソ関係の展開―欧州の冷戦と極東の熱戦」(日本政治学会)を報告し、中ソ関係の展開と冷戦との関係について探った。 個別の研究が着実に進み、次年度以降、研究を発展させる上での基礎が準備された。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については、以下の5点が推進方策である。(1)個別の情報収集と史料収集を継続し、翻訳作業を進めること。清水(研究代表者)は、外務省外交史料館での史料収集を進め、極東情勢(日本)の動向を把握し、ソ連の講和問題と国際政治との関連について分析を進める。また欧州の文書館においてオンラインで公開している情報と史料の収集と分析も進める。 (2)研究の精緻化。極東情勢と欧州情勢の連関(1950年代の国際政治)に関する研究の推進方策として、極東情勢と欧州情勢の展開を時系列に沿って比較検討する作業を進める。とくに旅順のソ連軍撤退問題(1950年)、中ソ同盟(中ソ友好同盟相互援助条約、1950年)、朝鮮戦争の勃発(1950年)、サンフランシスコ講和会議と対日ソ連講和案(1951年)、スターリン・ノート(1952年)、日ソ共同宣言(1956年)、ハンガリー動乱(1956年)を中心に、相互の出来事の関連を探る。また、昨年度と同様に各国指導者の世界観についても焦点を当てる。 (3)個別に進められている研究を総合化させるために、オンラインによる研究会を開催し、意見交換を進める。それにより、極東の分断と欧州の統合が、戦後国際政治のなかでどのように形作られたか探る。 (4)極東・欧州関係史研究会の開催。研究会の開催により、複数の知見が得られた。引き続き研究会を開催し、討議を継続する。 (5)研究成果の公表。研究成果を、研究報告(研究会、学会における報告)、研究論文(学会誌、紀要)として公表する。十分な情報収集と史料収集、ならびに実証研究として確立した分析がなされた研究成果については、それを順番に発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、ドイツ連邦文書館において、東西ドイツとソ連との対外政策の調整過程について情報収集と史料収集を進める予定であった。しかし、コロナ危機における世界的な移動制限のなかで、現地調査からオンライン調査へと切り換え、欧州の文書館においてオンラインで公開している情報と史料の分析に重点を置いた。そのため、予定していたドイツでの情報収集と史料収集を、変更(ないしは次年度以降に延期)することとなり、残額が生じた。 次年度使用額については、情報収集と史料収集の一部として活用する。とくに、1952~1956年の冷戦構造の展開について検討するために、関連する情報と史料の収集を進め、また次年度は、基礎的な史料の翻訳作業にも重点を置く。
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