研究課題/領域番号 |
18K01493
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
小尾 美千代 南山大学, 総合政策学部, 教授 (70316149)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アメリカ / 州政府 / RPS / RE100 / ダイベストメント / エンゲージメント / クリーンエネルギー / 再生可能エネルギー |
研究実績の概要 |
本研究は、温室効果ガス排出大国である米国における再生可能エネルギー(RE)市場の社会的構築の解明を目的としており、2019年度は4年間の研究計画の2年目にあたる。 米国では2018年11月に州知事選挙も含めた中間選挙が実施され、2019年1月に州の新政権が発足した。2019年に入ってからは、州内の発電に伴う二酸化炭素排出量をゼロにするという100%クリーンエネルギー化の目標を州法や知事命令として制定する州が増加している。さらに、州ごとのRE導入状況を分析した結果、これらの州では現状としては必ずしもREの設備容量が多いわけではないことが明らかとなった。そのことから、これらの州では今後の導入拡大が見込まれる。また、多くの都市でも100%クリーンエネルギー目標を設定するなど積極的な活動が見られている。こうした都市の中には、RE導入策がほとんどないような州の都市も含まれており、その役割や影響が注目される。 民間アクターに関しては、事業活動を全てREで賄うことを目的とする企業が拡大する中、企業と電力事業者の協力を促進する「再生可能エネルギー購入者連合(REBA)」が設立されるなど、制度化の進展も見られる。また、企業が大規模な電力需要家となることで、州のRE政策に影響を与えるようになっている。さらに、REのコストが低下している中で、電力事業者自身が100%クリーンエネルギー化の目標を掲げ、石炭火力発電からREへの転換を進める動きも見られるようになっている。 民間アクターとしては機関投資家の役割も重要であり、化石燃料関連からの投資を引き揚げるダイベストメントや、企業に気候変動対策を求めるエンゲージメントが拡大している。特に2020年1月に世界最大の資産運用会社のブラックロックがエンゲージメントを推進するClimate Action 100+に参加したことで、今後の役割が一層注目される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究2年目にあたる本年度は、州政府や都市、民間アクターとして大規模多国籍企業や機関投資家、さらには電力事業者について分析し、研究成果については2編の論文として公刊することができた。 他方で、本研究では再生可能エネルギー導入アクターとして、米国の最大のエネルギー利用者と言われる国防総省や米軍にも注目しているが、関連する資料についてはある程度は収集できたものの、十分ではなく、分析も他のアクターの分析と比較すると遅れていることから、「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も研究計画に沿って、州政府や主要都市の準国家アクター、多国籍企業や大手金融機関などの民間アクター、国防総省および米軍の3つのアクターを分析対象として、研究を進めていく。特に、軍事アクターによる再生可能エネルギー導入については、研究成果を公刊できるように、これまでに収集できた文献や資料まとめつつ、新たなデータについても適宜収集、整理しつつ分析を進めていく。 また、今年度は昨年度よりも大学業務が格段に増加したことから、研究時間を確保できるようなスケジュール管理・業務管理をすることで、本研究を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は、参加を予定していたアメリカでの国際学会が新型コロナウイルスの影響でキャンセルされてしまい、また、国際学会での訪米に合わせて予定していた資料収集や、英文チェックのための謝金についても支出の機会を逸してしまった。2020年度については、事情が許せば積極的に海外での学会参加や現地調査を実施する他、英文での論文公刊を積極的に行いたいと考えている。
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