ナチ・ドイツにおける「中欧」から「ヨーロッパ」への構想に関する史料集については、既にDocuments on the History of European Integration in 4 Volumesがあるが、これらに掲載されていないナチ期のヨーロッパ構想を捜索したものの、「パン・ヨーロッパ」関係に絞って調査した結果、史料は見つからなかった。「中欧」構想として、イタリア・ムッソリーニ政権による「ローマ議定書」に関するドイツ側の史料を発掘した。これについては現在解析中である。 ドイツとイタリアとの関係を調査すると、ナチ期だけでなくそれ以前の大統領内閣期、特にパーペン・シュライヒャー期の研究が必要であると考えるに至り、大統領内閣期における「中欧」構想について、「独墺関税同盟計画その後」と題して研究報告を行った(2021年4月、ドイツ現代史研究会)。これは当該年度後ではあるが、最終年度に行った研究の成果を発表したものである。本報告においては、独墺関税同盟における「中欧」構想はその後も継続し、それらがラテンアメリカなどの非ヨーロッパ地域とのグローバルな関係性の中で成立したことを明らかにしたという意味で、研究上の新しい可能性を開くことができた。この研究成果は2022年度中に論文として発表する予定である。 なお、最終年度もベルリン・ウィーンでの史料調査を継続し、研究成果をまとめる予定であったが、新型コロナウイルス流行に伴いヨーロッパでの調査が不可能となったため(文書館はすべて閉鎖するか、予約制で事実上一時滞在での利用が不可能)、文書館史料の収集は断念した。代わりに国内で注文できる刊行史料集Akten zur deutschen auswaertigen Politik 及びAkten der Reichskanzleiを購入し、研究に活用した。
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