一帯一路構想(BRI)を通じた中国の地経的台頭は、世界各地に大きな影響を与えている。インド、インドネシア、日本は、こうした中国のプレゼンスの高まりから大きな影響を受けている代表的な3カ国である。この3か国の対応に関する研究成果は、すでに英文学術誌や共同研究プロジェクトで公表していたが、最終年度はこれまでの実証研究を総合的に考察した結果を国際研究学会において発表することで研究成果の社会的還元に努めた。すなわち、中国のBRIに対する3カ国の政策対応を比較・絵討し、その対応には等しくヘッジ戦略としての特徴が確認されること、と同時に中国との外交安全保障関係、地域制度への関与、あるいは国内政治状況が3か国の政策対応の具体的方向性・内容に大きな影響を与えていたことを確認した。 コロナ禍の拡大と持続の影響で海外フィールドが困難になり、実証分析の対象を一部変更したこともあり具体的成果を出すまでに時間を要した。しかしアジア太平洋の国際関係に関する主要学術誌に論文の形で成果を出すととともに、BRIへの主要国の対応に関する比較研究プロジェクトに研究成果の一部を反映できたことは大きな学術的成果であると考えている。特に、順応と対抗という表面的には相容れない政策オプションを採用するヘッジ戦略を、実証対象とした3か国ともに採用していたが、こうしたヘッジ戦略を採用する環境や条件を国際政治・国内政治に目配りしつつ、ニュアンスの違いがあることを実証的に示したことが大きな研究の成果であると考える。
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