今年度は、後半に入ってから新型コロナウイルス感染症対策が緩和され、海外渡航にほぼ障害がなくなったために、3年ぶりに海外での史料調査を再開することができた。2023年2月にアメリカ議会図書館でカーター政権で大統領補佐官を務めたツヴィグニュー・ブレジンスキーの個人文書を、ケネディ大統領図書館ではウィリアム・レオンハートの個人文書を調査した。とくにレオンハートは1950年代半ばの米国の対日政策の立案を担っており、その考え方を理解するのに必要な文書を収集することができた。 昨年度にひきつづき、これまでに収集してきた史料の分析を進めた結果、米国の外交文書や個人文書の分析はおおむね終了した。日本の外交文書と突き合わせて、1950年代の日米関係の再構成を進めることができたことは、最終年度の大きな成果である。イギリスやオーストラリアの文書の分析、日本であらたに公開された公文書の調査・収集および分析作業はもう少し時間が必要であるが、対日講和条約・日米安保条約の締結から1960年の安保改定に至る時期の日本の政治外交、安保条約を基盤とする日米関係の形成について、包括的な議論を展開する準備はだいたい整ったと考えている。 1950年代の日米関係のスケッチは、2023年1月のAmerican Historical Association年次大会で報告した“The Postwar Japanese Security System in the Pacific Rim”にまとめた。また、日本占領の研究アプローチについて論じた“US Policy for the Occupation of Japan and Changes to It”(「米国の日本占領政策とその転換」山内昌之・細谷雄一編著『日本近現代史講義-成功と失敗の歴史に学ぶ』中公新書、2019年を加筆・修正)を発表することができた。
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