研究課題/領域番号 |
18K01501
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 晋 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (30553101)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 福祉国家 / 貧困 / 不平等 / 機会の平等 / 公共政策 / 公平性 / 潜在能力 / 社会選択 |
研究実績の概要 |
令和元年度においては、福祉国家の評価に関する指標の基礎理論を洗練させたものとし、応用的展開を行った。まず、研究会およびコンファレンスに参加することで情報収集を行った。研究報告を通じて意見交換を行い、研究をより成熟したものにした。社会的選択理論、不平等の経済学、政治思想、経済思想などの分野の研究者と交流を行い、研究に関連したさまざまな情報を得るとともに、研究の発展を進めた。 特に、社会的選択理論、厚生経済学、福祉政策の既存研究の理論的整理のもとに、政治哲学のグループと緊密に研究会を重ねることにより、思想的なバックグラウンドを固めた。こうしたうえで、共通部分アプローチというアマルティア・センによる評価方法を拡張した、共通部分=合併アプローチと呼ぶべきものを構成した。さらに、ロールズを代表とする現代の政治哲学の福祉国家のへの含意を検討するプロジェクトを進めた。特に、言語分析と制度がどのようなつながりを持つかを検討した。こうした思想的考察を前提に、社会的選択理論の枠組みで、集団的決定の合理性について論じた。次に、無羨望条件と呼ばれる分配の公平性の概念に加えて、平等性等価という別の公平性の条件を同時に満たす配分の特徴を明らかにした。将来世代の状況まで考えるような人口の多い社会における社会決定問題を検討した。特に、人口が多い社会で投票を行う際の政治的決定の基本構造が明らかになった。書き上げた論文は改訂を重ねて、海外の査読誌に投稿を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の理由で研究はおおむね順調に進んでいると判断した。 第1に、研究会および学会にて、関連研究に従事する研究者と交流を行い、情報交換をするとともに、研究を改善するための提言を得た。 第2に、前年度の基礎的分析の応用を進めることで、来年度の研究を進めていくうえでの足場を固めることができた。 第3に、当初書く予定だった論文を書くことができた。
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今後の研究の推進方策 |
第1に、福祉政策や貧困政策といった応用的課題への展開を進めるとともに、その規範的解釈を思想的に、そして、実証的に検討する。 第2に、現在日本社会が直面する喫緊の実際問題を分析して、現実社会への政策提言的議論を行う。 第3に、研究会や国際会議などへの参加によって、海外の専門家との意見交換を通じてさらなる研究の発展を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
1-3月において開催予定だった国際研究会がコロナウィルスの影響により延期となったことが原因となり、次年度使用額が生じた。
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