本研究では、多次元的アプローチを導入しつつ、福祉国家における厚生評価と厚生改善という、厚生経済学の基本的な課題に立ち返った。第一に、社会選択理論の公理的分析を発展させた。特に、標準的なアロー的な分析枠組みの拡張と、公平性の概念の分析を行った。また、さまざまな政策的応用も行った。第二に、近年の福祉国家論において重要である、正義論の歴史的・哲学的背景についても議論した。第三に、厚生に関する実践的アプローチについても行ったが、特に、新型コロナウイルスのパンデミックの発生も踏まえ、健康をどのように維持するかという問題についても考えた。こうしたことを踏まえて、福祉国家と社会厚生の関係を検討した。
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