本研究は、短期金利のみに頼らない金融政策スタンスの評価手法の提案を目指している。まず、米国経済での将来時点でのTaylor rule政策金利(Taylor ruleに従う短期政策金利)の予測値の推計手法を確立した。Taylor rule政策金利の値は、中立的な金融政策スタンスとなる短期政策金利と考えられている。そして、金融市場で取引されているOISという短期金利商品の将来時点に関する先物の値と上述の将来時点でのTaylor rule政策金利を比較し、その乖離幅(Taylor rule乖離幅)により金融政策スタンスを評価する手法を提示した。 2019年度中にTaylor rule政策金利の推定の頻度を半年から四半期に高め、サンプル期間を延ばし、時系列分析を一段と緻密化した。そして、将来時点でのTaylor rule乖離幅の変化が現時点での実体経済の変化を発生させるとの分析結果の頑健性を示した。 2020年度中は、上記の時系列分析から得られる変数間の関係性が動学的マクロ一般均衡モデルによっても支持されることを確認した。European Economic Association Annual Congress、日本ファイナンス学会総会、日本経済学会大会などで発表した上でTCER Working Paperとして公表した。 2021年度中は同Working Paperの内容を改良した上で国際的に評価の高いアカデミック・ジャーナルに投稿した。2022年度中に査読審査の結果が届き、現在同ジャーナルからのコメントへの対応作業を継続中である。今後サンプル期間のアップデートを行った上で再提出する。この間2022年8月にはSingapore Economic Review主催の国際コンファランスで発表の機会を得ており、その場で得られた知見も上記のコメント対応に反映させる。
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