研究実績の概要 |
企業組織や社会制度を設計する上で、情報収集や情報伝達のメカニズムは重要な問題である。しかし、情報の流れは、制度設計者がすべてコントロールできるものではない。組織の設計においても、構成メンバーによる自然発生的な情報の流れを勘案しながら、設計者の手の届く範囲においてコントロールすることが不可欠である。本研究では、ネットワークの進化を織り込んだ上での、情報伝達メカニズムの設計について考察する。 当該年度は、進化ゲーム理論の手法を用いて、プレイヤーが行動の意図を伝達する効果について考察した。 第一に、多数のプレイヤーが存在する社会の中でプレイヤーが誰と接触してプレーを行うかに影響できる状況を考察した。具体的には、ゲームに先立ち、各プレイヤーは自分がプレーする場所を選択し、同じ場所を選択したプレイヤーとの間でマッチングが形成されることを仮定した分析を行った。。第二に、プレイヤーが事前にメッセージを送ることができるが、メッセージはゲームにおける行動の意図に関するものであり、メッセージの受け手はメッセージを信じるか無視するかの解釈しかできないことを仮定した分析を行った。いずれの考察においても、結論として、ゲームが「自己シグナリング条件」を満たす場合、またその場合に限り、パレート効率的な均衡が選択されることが証明された。この結論は、Clark, Kay and Sefton (2001)らによる実験結果と整合的である。 本研究では、場所の選択というネットワーク形成に関わる意思決定と、ゲームにおける行動に関わる意思決定がどのように相互に関係しあうかについて、一つの特徴を明らかにすることができた。さらに、ネットワークの中でメッセージが及ぼす影響について、実験結果と整合的な理論的な説明を与えることができた。
|