研究課題/領域番号 |
18K01511
|
研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
小井田 伸雄 岩手県立大学, 総合政策学部, 教授 (30363724)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 不完備選好 / 非推移的無差別関係 / 意思決定理論 |
研究実績の概要 |
2019年度は、以下のような3つの方向性で研究を進めた。 まず、前年度に続き、主観的状態空間と不完備選好の関係を特徴づける論文について改訂を進め、国際学術雑誌への投稿を行った。その際、2つの選好を用いて分析することについては、多数の研究蓄積があるが、それらとの関係や、本研究課題における意義について丁寧に分析を進めた。 次に、非推移的な無差別関係に関する論文に関しては、引き続き改訂を行い、各大学の研究会等で発表を行った。この論文の大きな特徴は、Luce (1956)などによって分析されてきた選択肢間の小さな差異に対する認識の誤りが比較する選択肢の組み合わせによって変わるような枠組みを提示したことである。このような拡張を考えることにより、過去で理論的・実証的に示されてきた様々な経済行動を新たに説明できるようになったことに加え、従来議論されているものとは異なる、不完備選好と深い関連を持つ新たな種類の非推移的無差別関係を特徴づけられることが分かった。したがって、この研究は、過去の文献で十分明らかにされていなかった問いに対する答えを与えるとともに、近年盛んに研究が行われている不完備選好との関係を明らかにする点において、意義深いものだと考えられる。この研究については、他の文献との関係をさらに明らかにしながら引き続き分析を進める予定である。 さらに、今年度は、各種の研究会・学会などに積極的に参加し、関連文献を整理することで、さらなる研究の発展可能性を探った。上記の不完備選好や非推移的無差別関係において、選好の凸性は非常に重要な意味を持つが、近年、選好の凸性をより選好を直接的に使うことで精緻化した研究も見られる。したがって、このような新しい凸性とこれまで考えてきた選好表現との関係を明らかにすることで新たな知見が得られる可能性があるため、この点などにも注意しながら研究を進める。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度においては、新たな研究課題についての論文の執筆を行い、発表等も行ったため、本研究課題は、当初の予定通り、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度である2020年度は、以下のような方針で研究を進める。 まず、現在執筆している論文に関しては、査読結果等に応じて改訂を行い、早期の出版を目標とする。 次に、新しい研究課題に関しては、いくつか着想があるものの、前述した新しい凸性の定義と本研究課題で考慮している選好表現との関係や、不完備選好と非推移的無差別関係との関係についてさらに分析をすることにより、新たな知見が得られることが期待される。 なお、2019年度末から2020年度にかけては、COVID-19の影響により、多数の学会・研究会出席予定がキャンセルされた。したがって、2020年度はその影響をできるだけ軽減しながら研究を遂行する必要があると考えられる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は、本研究課題に関連した出張に関しては研究代表者の所属機関内の研究費を活用するなど、支出の効率化を進めた。また、年度終了前後に予定されていた学会発表などの計画がCOVID-19の影響により中止になったことにより、支出予定だった出張が取りやめになった。これらの影響により、次年度使用額が生じている。2020年度は、引き続きCOVID-19の影響により出張計画が不透明な状況であるが、統計パッケージの購入を行う、年度後半の出張を計画するなどの方法で効率的に支出を進める予定である。
|