今年度は、前年度に引き続き、柔軟性への選好と不完備選好の関連の特徴づけおよび非推移的無差別関係の公理化という2つのテーマを中心に研究を進めた。 前者については、国際学術雑誌への投稿を行い、査読者のフィードバックを受けながら改訂を進めた。特に、この研究で仮定する不完備選好は、メニュー選択における特定の形式の柔軟性への選好や確率的選択など、他の研究が分析対象とする意思決定モデルと関連があるため、その点について掘り下げて議論を行った。この修正により、本研究で得られた結果が、他の研究の分析結果に応用できることが示され、研究の重要性をより明確にすることができたと考えられる。 後者については、日本経済学会等の研究会・セミナーで報告し、多数のフィードバックを受けるとともに、より精緻な分析を行うための改訂を実施した。特に、Luce (1956)やFishburn (1970)が提案した不正確な認識の下での意思決定モデルは、この研究の特殊ケースとして位置づけることができるが、前者の枠組みと本研究の枠組みをより明確にするような改訂を行った。また、研究の大きな特徴の一つは、非推移的無差別関係モデルとDubra et al. (2004)が公理化した不完備選好モデルに関連があることを示したことにあるが、これらの関係が明確になるよう、例を付け加えるなどして議論をより洗練させた。 さらに、新しい研究プロジェクトとして、いくつかの論点に基づき分析を進めた。
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