高齢化の進行する民主主義国家は等しく有権者の高齢化という問題に直面しており、将来世代の利益は軽視されがちとなる。将来世代の利益を担保できる新た な投票制度として、選挙権年齢未満の子どもを有する親が、子供の代理として投票するという代理投票制度が注目を集めている。本研究では、代理投票制度が本当に将来の利益に資する選択を導くのか、という問いに対して、理論を構築し、実験室実験およびインターネット調査実験を用いて明らかにしていく。
2022年度までの研究では、将来世代への利他性という観点から、ラボ実験およびオンライン実験を実施しており、代理投票制度が有効に働くためにはその意味づけが重要であること、また、子供の利益を強調意識しすぎることによりむしろ親の将来世代への利他性が低下してしまう可能性があることなどの、いくつかの懸念事項が明らかとされた。
2023年度は、具体的な政策の選択という観点から、代理投票の効果について検証した。代理投票を採用することにより、人々が「より長期的展望に そった政策を公約として掲げる候補者」に投票するようになるかどうかを明らかにするため、政策の内容(教育の無償化、二酸化炭素の削減、など)、政策の達成時期(4年以内、10年以内、など)、政策実施のための予算(増税、赤字国債の発行、社会保障の削減)などの各項目をランダムに選択することで政策のプロ ファイルを作成し、それに対して回答者に投票させるようなコンジョイント実験による調査票を作成し、本調査を実施した。調査の結果、代理投票制度には、人々に長期的展望に基づく投票行動を促進する可能性があることを確認した。
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