研究課題/領域番号 |
18K01519
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
篠原 隆介 法政大学, 経済学部, 教授 (40402094)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 公共財 / スピルオーバー / 交渉 / 戦略的委託 / 投票 / 準優モジュラゲーム / コアリションプルーフナッシュ均衡 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究計画の初年度であるため、今後3カ年の研究計画を遂行するための準備期間とした。まず、次年度以降のゲーム・モデル分析で応用可能な概念として「被支配コアリションプルーフナッシュ均衡(undominated coalition-proof Nash equilibrium、以下、これをUCPNEと略す)」を導入し、その性質について明らかにした。UCPNEは、非協力ゲームにおける均衡概念であり、「プレイヤーが弱支配された戦略を取らない」ことを前提としたうえで、プレイヤーの結託行動に対して頑健な行動を解明する。本均衡概念は、既存のコアリションプルーフナッシュ均衡を基礎として開発された新たな概念である。本年度の主要な成果は、準優モジュラーゲームにおいて、UCPNEの存在と唯一性を明らかにしたことである。準優モジュラ性は、経済分析に登場する多くのゲームが満たす性質であることから、本研究の成果は、今後の経済分析に広く応用可能である。本研究成果は、既にEconomics Letters誌に掲載されている。
第二に、戦略的委託問題が、公共財供給に関する地域間交渉に与える影響について、特に、交渉に参加する各地域の経済厚生に与える影響について明らかにした。本研究では、交渉で発生する経済余剰は、戦略的委託効果により、偏った分配が行われ、偏りの程度は、地域間の人口差と公共財のスピルオーバーの程度に依存することが明らかとなった。特に、地域間交渉が、「経済全体の厚生」を改善しながらも、「一部の地域の経済厚生」を悪化させる場合があることを指摘したことは、Gradstein(2004, European Economic Review)等の関連研究では指摘されておらず、したがって、新たな貢献と言える。本研究は、次年度以降も継続し、分析の精緻化や一般化を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の基礎研究として位置付けした被支配コアリションプルーフナッシュ均衡の導入とその基本性質の解明については、既に完了し、英文査読誌のEconomics Lettersに掲載済みである。これに加えて、戦略的委託が引き起こす経済問題に関する研究についても、既に着手済みである。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の研究成果を基礎として、効率的に次年度以降の研究計画を遂行する予定である。また、平成30年度に着手した、公共財供給交渉における戦略的委託問題と交渉余剰の分配に関する研究の完成を急ぎ、国内外の研究会・学会で成果報告を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外報告の際に本科研費とは異なる研究費を使ったこと、学内業務(土曜日の講義実施)により国内学会・研究会への参加が当初の予定回数よりも少なかったことにより、研究費に残額が生じた。この差をうめるべく、本年度は、積極的に国内外の学会において研究成果報告を行う予定であり、この成果報告の出張旅費を本科研費から捻出予定である。
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