研究課題/領域番号 |
18K01519
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
篠原 隆介 法政大学, 経済学部, 教授 (40402094)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 公共財 / 交渉 / 委任 / 国際環境問題 / 自発的参加 |
研究実績の概要 |
複数の地域(国家を含む)に便益をもたらす公共財供給について、これら地域の間の公共財供給に関する交渉が、どのような帰結をもたらすかについて、検証した。特に、「交渉への自発的参加」と「代理人への交渉の委任」に注目し、これら二要素が、交渉の帰結に与える経済厚生上の性質について解明した。 地域間(もしくは国家間)交渉に関する既存研究では、公共財供給に関する交渉に各国が強制的に参加することが前提とされている。しかしながら、国際環境問題などの公共財供給の事例を見れば明らかなとおり、交渉への参加は、各国の自由意志に基づいている。本研究では、地域間(もしくは国家間)交渉が代理人によって行われる状況を考察しながらも、「交渉への参加は自発的に決定される」という新要素を考慮に入れてモデルを構築し分析した。先行研究では、交渉を代理人に委任することで、交渉の帰結がパレート非効率になることが明らかにされてきたが、本研究では、交渉への参加が自発的に決定される場合、先行研究が指摘するほどに深刻なパレート非効率配分は実現しないことが明らかとなった。国際環境問題に関する交渉を応用例とし、委任交渉の帰結がどの程度パレート非効率なものか、より厳密に明らかにしたことが本研究の貢献である。本研究成果をステップとして、今後、パレート非効率性を緩和する交渉ルールの設計を検討したい。 本研究の成果は、論文“Voluntary Participation in International Environmental Agreements and Authority Structures in a Federation”としてまとめ、日本財政学会(2019年10月)、DCコンファレンス(2019年10月)において研究成果報告を行い、学術雑誌に投稿済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度に得られた成果は、すでにワーキングペーパーとして公表し、海外の査読付き学術誌に投稿済みである。また、過年度の研究成果の一つは、公共経済学研究の専門誌として高い評価を確立しているJournal of Public Economics誌に論文を掲載することができた。別の研究成果については、海外の学術誌から改訂の要求を受け、改訂中である。
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今後の研究の推進方策 |
学術誌から改訂要求を受けている研究については、改訂を行い論文掲載のために努力する。その他の研究については、学術雑誌への公表のため、積極的に論文の投稿および改訂を行っていきたい。 2019年度の研究成果に立脚し、より効率的に研究計画を遂行することを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画時に計上していた「海外渡航費(1回分)」と「英文校閲費(2回分)」を他の研究費から捻出したため、残額が生じた。残額は、次年度の渡航費および英文校閲費などに、利用する予定である。
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