研究実績の概要 |
初年度は、3つのプロジェクトで進展があった。第一に、本研究課題の基礎となる共同研究(“Uncertainty Shocks and the Relative Price of Investment Goods”)を完成させ、査読付き国際的学術雑誌であるReview of Economic Dynamicsに掲載した。
第二に、流動性に関する不確実性ショックがマクロ経済においてより継続的な不況を生じさせるメカニズムを考えるための研究をスタートさせた。世界金融危機の際には、金融市場に関連した不確実性の増大が、マクロ経済に過去にあまり例をみない大きな負の影響を与えたことが知られているが、この問題を取り扱うために、流動性制約に直面する企業家を内生的成長モデルに導入し、分析を行った。これにより、流動性に関する不確実性ショックが大きな景気低迷を引き起こすことが確認された。これまでに得られた研究結果は、“On Financial Risk, Growth, and Long-Run Risk”(共著)のタイトルでまとめ、国内外のセミナーや学会で研究報告を行った。
第三に、労働者の異質性を考慮した際の賃金の硬直性が金融政策に与える影響を分析し、“Sticky-Wage Models and Knowledge Capital” (共著)というタイトルで大阪大学社会経済研究所ディスカッションペーパーとして公表した。財の異質性を考慮した際には、金融政策が中立的になるケースが存在することが知られているが、労働者の異質性と賃金の硬直性を考慮した際には、これまでとは異なった結果が得られることが明らかになった。
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