研究実績の概要 |
新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、経済に大きな影響をもたらしている。未知のウィルスの出現が経済活動に関する様々な不確実性を増大させた。とりわけ、様々な理由から、経済主体が新型コロナウィルスの感染状況を正しく把握することが困難な状況が生じた。この問題を考察し、最適な感染症対策と経済対策を考慮することは極めて重要である。そのために、通常の感染症モデルであるSIRモデルに動学的マクロ一般均衡モデルを組み合わせたSIR-Macroモデル (Eichenbaum, Rebelo, and Trabandt, 2020) の拡張を行なった。具体的には、家計の感染状況に対する認識と真の感染状況との間の乖離の存在を許容し、認識の乖離がどのような影響を与えることを分析した。この分析の結果は、” COVID-19 Misperception and Macroeconomy”(共著)というタイトルで早稲田大学現代政治経済研究所ワーキングペーパーとして公開した。また、各所で研究報告などを行い、幅広くコメントを得た。
なお、これ以外に昨年度から継続しているプロジェクトは、国際学術誌への掲載を目指しさらなる改訂と投稿を行なっている。労働者の異質性を考慮した際の賃金の硬直性が金融政策に与える影響を分析した共著論文は、知的資本(knowledge capital)生産が果たす役割を強調し、大幅な改訂を行なった。現在、国際学術誌へ投稿中である。また、流動性に関する不確実性ショックがマクロ経済においてより継続的な不況を生じさせるメカニズムを考えるための共著プロジェクトと、それから派生した有形資産と無形資産を明示的に区別した共著プロジェクトも改訂を重ねている。
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