研究課題/領域番号 |
18K01522
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
古川 雄一 中京大学, 経済学部, 教授 (50510848)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 国際共同研究(フランス、スイス、中国、台湾) / 金融政策 / インフレーション / イノベーション / 経済成長 / 所得格差 / 国民性のマクロ経済効果 / 国際研究協力(スイス、中国、フランス) |
研究実績の概要 |
金融政策が経済成長に与える影響について定性・定量両面から分析を行った。特に、実証的なエビデンスに立脚し、研究開発(R&D)投資を行う企業が、しばしば、投資の際に現金を保有している必要があるという、いわゆる cash-in-advance (CIA) 制約 を仮定することで、インフレーションの長期的な経済効果を、イノベーションに基づく内生定期市長モデルの枠組みで分析した。 大きく2つの分析を行った。1つは、インフレーションがマクロレベルの所得格差、イノベーション、経済成長に与える影響を見たもので、インフレ率の上昇は、R&D企業の参入行動に影響を与えることで、経済成長と所得格差に対していわゆる逆U字型の効果を持つことが、定性的に明らかにされた。加えて、モデルをカリブレートすることによって、経済厚生を最大化するインフレ率の値を定量的にしめした。 もう1つは、インフレーションと失業の長期的な関係を分析した研究である。労働市場にマッチングによる摩擦と、消費とR&D投資にCIA制約が存在する内生的成長モデルを構築した。R&D投資のCIA制約を通じて、インフレ率の上昇はイノベーション、成長を抑制し、失業を増加させる効果を持つ。消費のCIA制約は、インフレ率の上昇が失業減少的な効果を持つ方向に働く。この結果をサポートする実証分析・定量分析も行った。 これらは国際的に定評のある査読付き学術雑誌に掲載されている。加えて、本研究計画の発展に新たな方向性をもたらすような、国民性・文化のマクロ経済への役割など注目したい実証研究論文も国際的英文査読付き学術雑誌に公刊された。 以上の研究成果の大部分は、所期の計画通り、国際共同研究に基づいている。共同研究先は、リバプール大学(イギリス)、復旦大学(中国)、ザンクトガレン大学(スイス)、中国文化大学(台湾)、IESEG 経営大学院(フランス)などが含まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
まず、本研究課題の所期の目標は達成されていると考える。なぜならば、本研究計画の中心テーマに直接関連する研究成果が、すでに3本の論文として、国際的に十分な定評を持つ査読付き学術雑誌に公刊/受理されているからである (Journal of Money, Credit, and Banking, Review of Economic Dynamics, Scandinavian Journal of Economics)。そのうえで、当プロジェクトの今後の発展性を指し示すような実証研究結果も、すでに国際的な査読付き英文雑誌に公刊されているので、当初の計画を越えて、本プロジェクトは発展しつづけているといっても差し支えないと思われる。 また、本研究課題は、当初の予定通り国際研究協力・国際共同研究に明確に立脚しながら推進されてきた。成果物を国際共同研究として公刊されており、共同研究先も複数にまたがる。本研究課題の進捗状況を判断するにあたり、この点も評価したい。
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今後の研究の推進方策 |
所期の目的にそくして、金融政策の長期的な役割に関する分析を続ける。それに加えて、本プロジェクトを進めていく中で新たに浮かび上がってきた重要な要因(労働市場の不完全性、格差、国民性など)に関する研究も継続していく。 いずれの研究についても、下記の基本方針を継続して、本研究課題を推進していきたい。国際研究協力の継続・発展、研究テーマの深化、国内外の社会情勢のタイムリーな考察、分析の精緻化、論文の構成や表現の推敲、各方面へのサーキュレーションなどを通じて、より定評のある査読付き雑誌への公刊を目指していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外の共同研究者を訪問する、海外の共同研究者を日本に招聘する、あるいは国際学会を日本で開催するための予算について、共同研究者の都合および諸々の事情によって当該年度の実施が困難になったため、次年度使用額が発生した。
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