研究実績の概要 |
本研究の目的は、福祉政策を支える「ウェルビイング」概念の新たな理念化とその指標化を試みることにある。この目的に照らして、初年度は研究の第一段階として、社会心理学や倫理学や行動経済学などの諸分野において多様な展開をみせる研究の成果を猟歩し、同概念の新しい理解と射程を見定めてきた。さらに、約30種類程度ある主要なウェルビイング指標を、網羅的に検討した。この後者については、その成果を以下の論文として公刊した。Hashimoto, Tsutomu; Oda, Kazumasa; Qi, Yuan, "On Well-being, Sustainability and Wealth Indices beyond GDP : A guide using cross-country comparisons of Japan, China, South Korea," The Economic Studies (Hokkaido University), 2018, 68(1), pp.35-88. 加えて初年度には、ウェルビイング概念に基づく福祉哲学の刷新を図るべく、新たに「自生的な善き生(ウェルビイング)」の理論を構築し、その成果の一部を以下の論文として公刊した。「幸福の経済原理---自生的な善き生(ウェルビイング)の理論(上)---」『思想』2018年12月号、6-25頁、所収、および、「幸福の経済原理---自生的な善き生(ウェルビイング)の理論(中)---」『思想』2019年2月号、no.1138、88-102頁、所収、である。この他、関連するテーマの研究報告を、北海道大学とソウル国立大学の共同ワークショップ(2018年12月、北海道大学にて開催)にて報告し、あるいは理論的に関連するテーマの論稿を以下のような「ノート」として刊行した。"How a Fat Slave Can Make His Soul Noble: Takenori Inoki on Liberty," The History of Economic Thought, Vol. 60, No. 1, pp.164-170.社会的な情報発信としては、「なぜリベラルは嫌われるのか?」と題して、全三回にわけて、メールマガジン『αシノドス』に、2018年の9月から12月にかけて、連載した。
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