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2019 年度 実施状況報告書

20世紀初頭ウィーンにおけるマッハ・コネクションの解明と分析

研究課題

研究課題/領域番号 18K01528
研究機関小樽商科大学

研究代表者

江頭 進  小樽商科大学, 商学部, 副学長 (80292077)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードErnst Mach / Karl Polanyi / Michael Polanyi / Vienna Circle / cognitive science
研究実績の概要

本年度は,エルンスト・マッハ自身の研究を(1)経験主義に至る方法論的遍歴の精査,(2)非哲学的認知科学の系譜,(3)相対性の概念と古典熱力学の関係の3点から再検討を行った。(1)(2)については,自然科学的手法を社会認識に応用しようとする同時代の他の科学者との比較を行ったが,文献的調査がまだ十分でないので,結論には至っていない。(2)については,彼の議論を応用しようとした「後継者」たちの議論と比べて,マッハが驚くほど,カントやヒュームに言及しておらず,その類似性にもかかわらず,マッハの研究が独立したものである可能性が高いことが推測されている。
さらに本年度はマッハ・コネクションのうちのポランニー兄弟への影響を考察したが,弟マイケルほどは兄カールへの影響は持続していないのではないかという一次的な仮説を得た。しかし,この研究は,英語以外の文献の調査が進んでいないため,結論を出すためには遠い。継続して検討をおこなうが予定である。この後,英語・ドイツ語文献だけでなくハンガリー語の文献も対象に入れて特にカールへの影響関係を調査するが,マッハとの関係を明示する文献がない場合は,カールとマッハの関係は限定的と見なすことが結論できる。
このように19世紀末の物理学者マッハを出発点として,20世紀初頭のオーストリア・ハンガリー圏の知的ネットワークを描き出そうという試みは,知識論と方法論の二軸を据えれば捉えられるという仮説はほぼ実証できると考えられる。残された課題としては,当時非常に流行し,知識人に影響を与えたにもかかわらず,これまで無視されてきたのはなぜかという点である。この点を明らかにすることがこの研究のまとめになる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

いわゆる経済学におけるマッハ・コネクションはポランニー兄弟,ウィーン学団,ウィトゲンシュタイン,カール・ポパー,シュンペーター,ハイエク,レーニンさらにはドラッガーやフリードマンまで及ぶ。これはマッハの議論が19世紀末から20世紀初頭のヨーロッパの知識人の間で流行したこととも関係している。その全体像を明らかにすることは容易ではないが,本研究計画では経済学者を中心に,知識論,方法論に限定していることもあり,個々の経済学者との知的な影響関係をつぶさに調査することで一応の成果が上がっていると考える。

今後の研究の推進方策

令和2年度は,最終年度として研究の総括に入るとともに,経済学の歴史での本流であるシュンペーターとハイエクへの影響関係を見る。ハイエクに関しては,これまで彼の認知科学に関する研究の蓄積があるため,それを再考することで完成すると考えられる。シュンペーターにかんしては,塩野谷裕一が指摘する道具主義に留まるのか,社会認識の方法にまで及ぶのかを考察することが鍵となる。本年度中に研究をまとめて学術雑誌に投稿することを目標とする。

次年度使用額が生じた理由

物品購入時の端数により,41円の残額が生じた。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020 2019

すべて 学会発表 (1件) 図書 (2件)

  • [学会発表] Tarca Re:boot2020

    • 著者名/発表者名
      江頭進
    • 学会等名
      進化経済学会北海道部会
  • [図書] 北海道社会の課題とその解決2019

    • 著者名/発表者名
      小樽商科大学地域経済研究部編
    • 総ページ数
      183
    • 出版者
      ナカニシヤ出版
    • ISBN
      978-4779513572
  • [図書] 人口半減社会と戦う2019

    • 著者名/発表者名
      小樽市人口減少問題研究会編
    • 総ページ数
      266
    • 出版者
      白水社
    • ISBN
      978-4560097298

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公開日: 2021-01-27  

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