本年度は、研究計画最終年度であり、研究の総括と学会での発表を行った。これまでの研究結果とは異なり、カール・ポランニーへのエルンスト・マッハの影響が限定的であり、その初期に限られること、その影響は師ピクレルを通じてのものがほとんどであることが文献調査を通じて明らかになった。これは彼の弟であるマイケル・ポランニーとは大きく異なる。 他方で、これまで検討されていなかった、実証主義における確率論の扱いが、カールポパーと、リヒャルト・ミーゼスの関係からある程度明らかになった。この問題は、経済学に留まらず、アインシュタインと量子力学の関係の中にも内在し、19世紀末から20世紀初頭の、ドイツ語圏の科学全般にかかわる問題として今後さらなる検討が必要である。また、付随する問題として、リヒャルト・ミーゼスの兄で、オーストリア学派の中心人物、かつハイエクへの影響の強いルードヴィッヒ・ミーゼスともリヒャルトの議論は大きく異なっていることがわかったが、これは今後の検討が必要である。 これらの成果は、2020年8月29日(土)開催の第40回経済学方法論フォーラムにて、「エルンストマッハと知識論の系譜」と題して報告された。
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