研究課題/領域番号 |
18K01529
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
結城 剛志 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (40552823)
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研究分担者 |
江原 慶 大分大学, 経済学部, 准教授 (20782022)
泉 正樹 東北学院大学, 経済学部, 教授 (90517038)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 計算貨幣 / バーミンガム学派 / マルクス学派 / ポスト・ケインズ学派 / 商品貨幣 / 国定貨幣 / 管理通貨制 / イングランド銀行 |
研究実績の概要 |
本研究計画の目的を改めて確認しておきたい。本研究は、イングランド銀行の兌換停止を受けて計算貨幣論という観点から不換銀行券制度の問題にいち早く取り組んだバーミンガム学派の知見を整理しつつ、現代の経済諸学派との錯綜した知的継承関係を整理し再構成するものである。不換銀行券制度の本質を見定めるために「貨幣とは何か」をめぐる研究が進められているが、鍵となるのが計算貨幣という理解である。この点に着目した先行研究はほとんどみられない。そこで、第1に、バーミンガム学派の計算貨幣論を調査し、学派内部の展開関係を明確にする。第2に、不換銀行券制度をめぐるポスト・ケインズ学派とマルクス学派の論争の淵源が計算貨幣論にあることに着目し、各学派における計算貨幣論の受容過程を分析する。第3に、計算貨幣論を軸とした現代の貨幣・金融制度の体系的理解を提示する。 以上の研究目的・方法にしたがい、平成30年度は以下のように研究を進めた。結城は、戦間期のアメリカにおける貨幣改革をめぐる論争の中で争われた貨幣数量説と銀行信用の理解を整理し、マルクス体系における貨幣改革の取扱いと貨幣論と信用論を架橋する変容論のコンセプトを論じた。江原は,現代の貨幣・金融制度の根幹をなす,銀行や商業資本について体系的考察を進めるとともに,資産商品を含むかたちで展開する現代の金融市場を理解する上で,商品に関する理論を深める必要性を論じた。泉は,貨幣が歴史的に姿を変えてきたことを説明する際に用いたのと同型の論理構成を,マルクス経済学の基礎理論の他領域(労働過程論)にも適用できるか否かの検討に着手した。その過程で、通貨・金融政策を労働論の一環として捉える着想を得た。さくら原論研究会編『これからの経済原論』(ぱる出版,2019年)の執筆では,本研究課題に携わる3名が中心的な役割を担い,貨幣論に関する新たな知見を経済理論の体系的理解につなげた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度中に提出した研究成果は、雑誌論文計6件(うち査読付論文5件)、学会発表計9件(うち国際学会3件、招待講演3件)、図書1件である。昨年度に引き続き、極めて順調なペースで研究成果を発表している。 ただし、研究の進展が著しいのは、研究目的に掲げた3つの目的のうち、第2の「不換銀行券制度をめぐるポスト・ケインズ学派とマルクス学派の論争」、「そして第3の現代の貨幣・金融制度の体系的理解」に貢献する部分に集中している。第1の「バーミンガム学派の計算貨幣論を調査し、学派内部の展開関係を明確にする」との課題については、いっそう精力的に取り組む必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画調書にしたがって研究を進める。これまでと同様に、コンスタントな成果発表を続けていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度末に開催が予定されていた研究会が中止になったため、旅費の使用が延期された。
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